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1児の母として日本柔道強化を。
福見友子が捧ぐ「すべての情熱」。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byShino Seki
posted2017/10/15 08:00
母であると同時に、日本柔道の強化に邁進する福見。その原動力はこれまで携わり続けた柔道に対する感謝がある。
「松本薫も出産してから頑張っている」
家族や親族の協力も得ながら、JR東日本柔道部、日本女子代表双方でコーチとして懸命に取り組んできた。
葛藤もある。
「コーチとしては後ろめたい部分がもちろんあります。ある程度こっち(子供)に時間をかけたりしないといけないので」
そしてこう続ける。
「その分違うところで、特に選手を見るときは100%で見て、それで両立させてやっていくしかないなと思っています。そういうこともチャレンジしていかないと。いろいろな競技で女性が頑張っていますから。松本薫も出産してから頑張っていて、ここにも練習に来たりします。子供2人を寝かせてやったり。
こういうことが当たり前のようになっていけば、結婚や出産は引退してからでなければいけないということもなくなってくるし、選手としてやれる時間も長くなる、人生設計も変わると思うんです」
情熱を捧げないと選手も向き合ってくれない。
練習の合い間の短い休憩、練習後には、監督や選手たちが子供の顔を覗き込んでは笑顔を向け、話しかける光景があった。練習中の真剣な空気に加え、そんな穏やかな空気もまたきわめて自然だったのは、福見の選手に向かう姿勢、自身の行動で道を切り拓いて行きたいという思いあればこそかもしれない。
――指導にあたって、いちばん大切なことは。
問いを投げかけると、考えた末にこう答えた。
「情熱ですね。選手のために力を傾ける。そこにすべて、情熱を捧げないと選手も向き合ってくれない。すべてをかけられるかどうかだと思います」