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“最強のふたり”武豊&キタサン。
秋の主役の熱烈な「ニンジン愛」。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byRyozo Katayama
posted2017/10/12 17:00
武騎手が隠していたニンジンを……ガブッ! とキタサンブラックが来た瞬間です!
清水調教師のアイディア、“ニンジン作戦”とは?
やがて調教を終えた武騎手が清水厩舎に到着。
武騎手は2週間後に行われる京都大賞典で騎乗予定のスマートレイアーの調教を行った後、撮影にかけつけてくれた(ちなみにスマートレイアーはその後、見事同レースを勝利。武騎手は前人未到の同一重賞9勝目の記録を作った)。
撮影開始。当然のことながら、キタサンブラックはカメラの前だからといってじっとしてくれるわけではない。レースでの落ち着きぶりとはうってかわって元気いっぱいのキタサンは、人が横に立つと構ってほしくてたまらない。それがレースパートナーとなると尚更なのだろう、しきりに武騎手にじゃれて、噛もうとする。
そこで、清水調教師から提案されたのが“ニンジン作戦”だ。好物のニンジンを食べている間は、キタサンブラックは食べることに集中するため、おとなしい。その隙に武騎手が横に立ち、素早くシャッターを押す――。
この作戦が大成功。キタサンブラックは武騎手が「本当にニンジン好きですね」と感心するほど、食への執着(?)を示したのだ。
武騎手が持つニンジンを食べるスピードが早い。
武騎手がニンジンを持って近づく。待ってましたとばかりにキタサンがニンジンにかぶりつく。しばしの静寂、シャッター音。思った以上にキタサンがニンジンを食べるスピードが早い。すぐにニンジンがなくなり「もっと頂戴」と言うがごとく、武騎手にじゃれつこうとする。武騎手が馬房を離れ、再びニンジンを手のひらへ――
まさに、撮影はキタサンと武騎手とニンジンを巡る“時間との闘い”となった。
その繰り返しの中で撮れたベストショットが表紙に使用された1枚だ。撮影終了後、カメラマンの小林紀晴氏が「馬ってもっとおとなしいものだと思ってたけど……」と苦労の表情をにじませたのも忘れられない。