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完璧主義から、一日一善への変化。
オリ西野真弘が田口壮に言われた事。 

text by

米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byKyodo News

posted2017/09/12 07:00

完璧主義から、一日一善への変化。オリ西野真弘が田口壮に言われた事。<Number Web> photograph by Kyodo News

1年目の3割はまだ遠いが、西野真弘の調子は確実に上向いている。楽しそうであることは、プロ選手にとって重要なことだ。

「僕はもうメインの選手じゃない、泥臭く」

 7月25日に一軍登録され、当初は好調だったが、再びブレーキがかかってしまった。セカンドは大城滉二や小島脩平との併用で、西野は代打やサードで起用されることも増えた。

 田口二軍監督の言葉を思い出し、プラス思考を自分に言い聞かせながらも、いらだちを隠せないこともあった。

「今年はできる、やったろうみたいな自信や、自分への期待を持ってスタートしたのに、今こんな状況なので、自分に対してすっごくイライラします。すごく情けないし、悔しい」

 9番セカンドで先発出場した8月23日の北海道日本ハム戦では、第1打席にレフト前ヒットを放った。詰まった打球で決して会心の当たりではなかった。以前の西野なら、理想の打球じゃないな、と首を傾げていたかもしれないが、この時は違った。

「今の時点では、どんな当たりでもいいです。とにかくHランプがつけば、出塁できれば。僕はもうメインの選手じゃない。脇役という立場なので、泥臭くやるだけです」

ようやく見られた心底楽しそうに塁上を駆け回る姿。

 そうしてもがき続けた先に、ようやく光が見えたのは8月の最終戦だった。31日の千葉ロッテ戦で4打数2安打3打点の活躍。9月2日の埼玉西武戦では勝ち越しタイムリーを放ち、4月7日以来のお立ち台に立った。

「いろいろ試行錯誤してきた中で、『この形で大丈夫だな』というのができてきました。この前まではバットが遠回りしていた。それでいて打ちたい打ちたいと気持ちが先行して、体で向かっていきすぎていた。だから打ちたいポイントで打てていなかったし、軌道も全然違っていた。結果が出ていないからとにかく1本が欲しくて、焦って打ちにいって自分で自分の首を絞めていたんだと思う。バットがスムーズに、遠回りしないようにというのを意識してから、自分の思ったポイントで打てるようになってきました。

 今でも必死は必死ですよ。でも以前よりは落ち着いて打席に入れるようになりました。これでいいんだと自分を信じて、もう終盤ですけど、ここから上がれるように、挽回できるようにやっていきます」

 その後、西野はセカンドでの先発出場を増やし、安打を積み重ねている。俊足を活かして先の塁を狙う積極的な姿勢も出てきた。

「無理矢理楽しもうとするのも、それはそれでちょっとキツイ時もあるんです」と苦笑していた西野が、今は心底楽しそうに塁上を駆け回っている。

 完璧主義の西野は「まだまだ」と言うが、完全復活の日は近いはずだ。

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