藤田俊哉の日欧蹴球比較論BACK NUMBER
日本のS級は欧州では無価値なのか。
藤田俊哉が考えるライセンス問題。
text by
藤田俊哉Toshiya Fujita
photograph byToshiya Fujita
posted2017/08/31 11:30
オランダでも指導者として高い評価を受けている藤田俊哉氏。欧州で監督になる、という夢のためにも、ライセンス問題は早期解決を望みたい。
互換性がなければ、最初から欧州へ行くしかなくなる。
日本で時間をかけてS級ライセンスを取得しても、海外ではまた最初(一番下のカテゴリー)からライセンスを取り直さなければならないとなれば、トータルで20年は必要になる。ブンデスリーガで20代の指揮官が誕生するなど若い監督が増えている時代に、この状況が続けば、若いうちにプロコーチとしてヨーロッパに挑戦できる日本人など皆無となってしまう。
もしライセンスが一切の互換性を持たないと決まれば、指導者として海外挑戦するならスタート時から海外でライセンス取得を目指す方がいい。その方が圧倒的に効率がよくなってしまうのだ。
多くの日本人選手が海外でプレーしている今、指導者にも色々な経験が必要となる。Jリーグが誕生して約25年、日本のサッカーは確実に成長を遂げてきた。なかでも選手の成長は目を見張るものがある。
それとのアンバランスが生じないよう、指導者をはじめ他のあらゆる面でもレベルアップが必要だろう。またそう考えて取り組まなければ、今後日本サッカーがアジアをリードしていくことも、W杯で上位進出を果たすことも実現は難しい。
日本のS級は、UEFA Proと同等だと主張したい。
ヨーロッパに来て3年半、オランダが中心ではあるが各国で試合やトレーニングを見てきた。オランダコーチ協会に登録して研修にも参加した。VVVフェンロで行われたライセンス講習のサポートもした。
ファン・ニステルローイによる「UEFA Pro」(UEFAの最高位)ライセンス講習での最終試験を見ることもできた。VVVフェンロの選手が参加しているライセンス講習(日本の「C級」ライセンスに相当)も見学した。それらを見た率直な感想は「日本との特別な違いは見当たらない」というものだった。
日本でS級を受講するときに義務付けられる海外研修の受け入れ先は、確実に増えてきていると聞いた。VVVフェンロにも今年1月、3人のS級受講者がトレーニング、キャンプに参加した。
その他にも、Jリーグでの監督経験のあるインストラクターが、現場で必要なことを伝えてくれる。充実したカリキュラムがあり、それらに費やす時間も1年間と充分なものだ。総合的に判断しても、日本のS級ライセンス講習のレベルは決してヨーロッパのライセンス講習に引けを取らない。
これからも私は自信を持って、日本のS級ライセンスは「UEFA Pro」と同等だと主張していく。多くの指導者仲間が議論を重ねて今後の方向性を決定することが重要だし、ドイツやオランダにあるようなコーチ協会の存在も、今後は必要になってくるのかなと考えている。