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2年連続昇格でまさかのセリエA!
“魔女の街”ベネベントの大冒険。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2017/08/26 08:00
初のセリエA開幕をアウエーで迎えたベネベントは昨季10位サンプドリアを相手に先制するも、前半38分、後半9分に失点して、逆転負けを喫した。
ドリブル成功数、攻撃時間など統計データを超重視。
指導者になったバローニは、有名選手が引退後すぐにセリエAクラブを率いるチャンスを与えられる最近の風潮を苦々しく見つめながら、現役時代のように地方クラブを転々としてきた。
重視するのは統計データだ。
バローニの口からは、ボール支配率だけでなくゴール枠へのシュート数や攻撃の時間とチャンスを作った数、ドリブル成功数とクロスの数など、データがスラスラ出てくる。
レンタル選手の返却や有望な若手の引き抜きなどで昇格メンバーの大半は入れ替わってしまったが、フロントは乏しい予算の中から、即戦力としてラツィオのMFカタルディとアタランタのMFダレッサンドロを獲得してくれた。
残留を争うライバルたちとの戦力差を計算し、データを反映させながら、無頼の監督バローニはつねに攻略の目を探る。
チームの大黒柱はエースFWチェラボロだ。
昨季は通算20ゴールを挙げて、セリエBの得点ランク2位になった。
クラブや町にとっての初舞台だからこそ、ベテランFWチェラボロがかつて培ったセリエAでの経験が貴重になる。8年前、アタランタ時代に不世出のGKブッフォン(ユベントス)から奪ったゴールは、彼のキャリアの金字塔だ。
「いくつになっても、昇格を勝ち取ればプレーヤーとしての自分のレベルも上がる。セリエAってのはそういう場所だ。ベネベントで昇格できて嬉しい」
クラブ幹部は「初めてのことばかりで心の準備が……」
12800人分の席しかなかった本拠地チロ・ビゴリートは、8月上旬時点で8000席が売れた。クラブ幹部が「初めてのことばかりで心の準備が追いつかない」と嬉しい悲鳴を上げながら、約5000席の増設工事も急ピッチで進んだ。
プレシーズンマッチではMF長谷部誠のフランクフルトと1-1で引き分けるという望外の結果も得た。しかし、夢見心地もそこまでだった。
開幕直前のコッパ・イタリア3回戦で4失点大敗を喫し、大会から敗退。守備陣は猛省を促された。
「いい教訓になったはずだ」(バローニ監督)