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内藤哲也また1年遅れのG1制覇。
その現象は東京ドームでの大合唱へ。
posted2017/08/16 17:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
内藤哲也は満足気に、そしてうなずくように「デ・ハポン!」を大合唱した満員のファンに視線を投げた。
8月13日、両国国技館。新日本プロレスG1クライマックス優勝戦は、内藤と前年優勝者のケニー・オメガの戦いになった。
優勝戦のリングには、IWGPヘビー級王者オカダ・カズチカもインターコンチネンタル王者の棚橋弘至もいなかった。
「また1年遅れか……」
そんな思いが内藤の脳裏をよぎる。それでも、内藤はかすかな笑みを浮かべて、ゆっくりと国技館の風景を眺めていた。
昨年も、内藤が率いる黒い「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」のTシャツを着たファンが、国技館に大挙して集まっていた。それなのに、優勝戦のリングに内藤はオメガに敗れて立つことができなかった。
悔しさというよりは「またか」という思いと、さらなる開き直りが内藤の体に宿った。
状況は流れに任せるのではなく、自分たちで変えなくてはならない。
これだけの大勢のファンを味方につけて、インゴベルナブレスの名のもとに非紳士的行為でも是認される状況を、ストロングスタイルという名が生き残っている新日本のリングにまかり通らせたのだから。
トップ対トップの壮絶な戦いとなった優勝戦。
内藤はリングに上がって、オメガと対峙した。
オメガは類まれなる研究心とスキルを持ち合わせていて、今はソウルも充実している。そのオメガが“ガイジン”として2年連続のG1制覇という大きなテーマをもって内藤に向き合った。
オメガはUS王座のベルトを腰に巻いて、ジャケットを脱ぐと、内藤より優っている肉体をファンに誇示した。
インゴベルナブレスの勢いに押され気味のバレット・クラブのトップとして、ここで生き残るために、内藤をキャンバスに沈める必要があった。
軍団を率いるプライドもあった。トップとトップの勝負だった。