ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
ボクシング三浦隆司、33歳の岐路。
不器用な元王者は完敗に何を思う。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byGetty Images
posted2017/07/18 11:25
王座陥落から2年弱かけて辿りついた世界戦で、再びの敗戦。三浦隆司は現役を続行するのか、それとも……。
村田諒太「ベルチェルトは作戦が徹底していた」
三浦が後半に見せたボディ攻撃は、見る者の心を激しく揺さぶる迫力があった。劇的な逆転勝利もありうると思わせたが、逆転への望みは、ベルチェルトの技術と強い意思によって阻まれた。
三浦のジムメイト、ミドル級世界ランカーの村田諒太は次のように解説した。
「ベルチェルトは逃げるときは逃げる、三浦さんが打ち終わりにバランスを崩したときに打つ。本当に作戦が徹底していましたね。終盤、ボディをもらって下がりましたけど、11、12回は前に出て、台風の目の中に入るようにして、ボディをもらわないようにした。うまかったと思います」
ベルチェルトは「三浦に勝つにはこれしかない」というボクシングを終始展開し、終盤のピンチも機転を利かせてしのいだということだ。5ポイント差のジャッジは後半、三浦に好意的な採点をつけたが、それでも11、12回はベルチェルトを支持した。
王座陥落後も世界ランク1位だったが……。
試合後の三浦は次のように語っている。
「(脚を使う相手に)追い込みが足らなかった。効いた左ボディもありましたけど、うまく逃げられました。練習したことは出せたと思うけど、それ以上に相手がうまかった」
2015年11月、三浦は米ラスベガスのリングに立ち、4度防衛した王座をフランシスコ・バルガス(メキシコ)に敗れて失った。負けはしたものの、この試合はダウンの応酬、まれにみる激闘となり、全米ボクシング記者協会をはじめ、多くの米メディアが年間最高試合に選出した。
この試合内容を考慮され、三浦は王座陥落後もWBC世界ランキングで1位をキープ。今回のイベントでメインに抜擢されたのは、ベルチェルトの人気と実力のみならず、激闘を売りにする三浦が相手だったことも一因だった。