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野村敏京の辞書に「スランプ」は無い。
全米女子で樋口久子以来の優勝を。
text by
南しずかShizuka Minami
photograph byShizuka Minami
posted2017/07/10 11:00
最近になってようやく専門的なトレーニングや食事管理などを始めたという野村。伸びしろはまだまだある。
パットは高校になるまで練習したことがない。
いつも正確なスイングができているわけなので、新しいクラブ選びの基準も明快である。
「気持ちよく振って、思った球筋になるかどうか」、「今のクラブよりも優れた点があるかどうか」……ちょっと試しに振ってみただけで、野村は自身にあうクラブを即座に選ぶことが出来る。
プロ担当歴13年の梶山は「調子の良し悪しが少なく、新しいクラブに変更することに抵抗がない。ここまでフラットな感覚で新しいクラブを試せる選手は、これまでに彼女を除いて出会ったことがない」と感心する。
野村の今季の平均パット数は28.48で堂々の3位である(7月9日現在)。
「グリーンでは、上り、下り、スライス、フックという4つの傾斜しかないですから。自分のタッチと距離感を決めて(パットを)打つだけです」
とても簡単なことのように野村は話すが、高校に入るまではパットの練習を殆どしてこなかったため、極端にパットが下手だったらしい。
「全然ダメでしたねー。長尺パターや、大きいヘッドを使ったり、グリップの握り方を変えたり……もう、本当に色々試しましたよ(笑)」
散々、試行錯誤した結果、ある時、ふっと気づく。
「ストロークしか考えてなかったんですよ。『(パットの)タッチ』を考えるようになってから、すごく良くなりました」
今では、一番得意なプレーは「パット」と即答するほどに自信があるという。
初めて聞いた、野村の「不安」。
ハキハキと話す野村から初めて「不安」という、らしからぬ言葉が出たのは、1回目の米ツアーの挑戦について質問した時だ。
「どういうふうに打ったら、どこにボールが飛ぶか、分からなかったんです。1ショット、1ショットが不安でした……」
'11年と'12年の2年間で、一度もトップ10入りすらできず、'13年は国内ツアーに主戦場を変えた。米ツアーから一旦離れたことで、自分のことを見つめ直すきっかけとなった。
「本当は(自分のプレーを)分かっていたんですよ。ただ、自信が無かっただけなんだなと」
そして、「気持ちを強く持つ」と決意し直して'14年に再び米ツアーに挑戦する。