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新生女子バレー代表のキーマン宮下遥。
「これはもう失敗できねーなーって」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byAFLO
posted2017/07/06 17:00
リオ五輪は涙で終えた宮下遥。日本女子バレーの新スタイル確立のためにも、セッターの力は絶対不可欠だ。
“スピード”はセッターだけの責任ではない。
中田監督は、全日本で目指すものの1つに“スピード”を挙げた。
眞鍋政義前監督時代にも、宮下は速いトスを求められ、スパイカーとのコンビに苦労していたため、またもスピードがストレスになるのではないかと気がかりだったが、宮下は「今のところ苦もなくやれています」と明るかった。
「スピーディーに、コンパクトに、テンポよく、というところは今、セッターだけじゃなく全員が取り組んでいるところです。もちろんトスもそうなんですけど、1本目のパス(返球)からテンポよくというのを、みんな高い意識を持ってやっています」
サーブレシーブなどの返球を高く上げるのではなく、コンパクトにセッターに返して瞬く間に攻撃し、相手に余裕を与えないことを目指している。
「スピードと言っても全部セッターにかかってくるわけじゃなくて、久美さんも『パス!』、『パス!』とよく言いますし、1本目をすごく大事にされているというのはセッターとしても感じます。所属チームによっては、1本目は高く上げると決めているチームもあるので慣れていない人もいて、1本目に触る人はすごく大変そうですけど、トスについては、それほど速く速くと言われることはまだないですね」
チームの方針に納得し、ストレスなくバレーに取り組めている様子がうかがえた。
迷いなく進むことで、宮下はさらに一段上の選手へ。
試合に集中すると高い身体能力や並外れた勝負根性を発揮する宮下だが、頑固で一途な一面があるため、納得できないことや、自分が信じてやってきたこととは異なることを、すんなりとは受け入れられないところがある。そうして心のどこかに引っかかりがあると、プレーも表情も乗り切らない。過去4年の全日本では、そのせいで停滞した時期もあった。
しかし、宮下と同じように10代から全日本の司令塔を務めた経験があり、選手と徹底的に向き合う中田監督なら、宮下の納得がいくまでとことん話し合いながら進んでいくことだろう。そうした意味では、宮下の能力をこれまで以上に開花させるかもしれないと、期待は膨らむ。