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新生女子バレー代表のキーマン宮下遥。
「これはもう失敗できねーなーって」 

text by

米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byAFLO

posted2017/07/06 17:00

新生女子バレー代表のキーマン宮下遥。「これはもう失敗できねーなーって」<Number Web> photograph by AFLO

リオ五輪は涙で終えた宮下遥。日本女子バレーの新スタイル確立のためにも、セッターの力は絶対不可欠だ。

リオ五輪をかけた最終予選が宮下を強くした。

「命が何個あっても足りないんじゃないかっていうぐらい、きつかった」

 宮下がそう振り返るのは、昨年5月に行われたリオ五輪世界最終予選である。五輪出場は当たり前のように思われていた全日本女子が、大苦戦した大会だった。

 初戦のペルー、2戦目のカザフスタンには勝利したが、3戦目で韓国にセットカウント1-3で敗れて苦しくなった。ヨーロッパの強豪イタリア、オランダとの対戦を大会終盤に残している日本にとって、続くタイ戦は絶対に勝たなければならない試合だったが、フルセットとなり、第5セットは6-12とリードされ絶体絶命のピンチだった。

 それでも宮下のサービスエースなどで追い上げ、辛くも逆転勝利で踏みとどまった。そして第5戦のイタリア戦は、エースの木村沙織が爆発。フルセットで敗れたが2セットを取って勝ち点1を獲得し、リオ五輪の出場権を手にした。

「大会期間もですけど、大会までもすごく苦しかった。『切符を獲れなかったらどうしよう』とか、『でも獲るためにやらなきゃ』とか、いろんな思いがある中でずっと過ごしていました。ずっと崖っぷちだったので、本当はダメなんですけど、切符を獲れた時はほっとしたどころじゃなくて、達成感がはんぱじゃなかったです」

その経験を自分の力に変えられていないもどかしさ。

 最終予選の経験は宮下を確実に強くしたはずだ。しかし宮下自身はその変化を自覚できず、もどかしさを抱えている。

「ああいうすごい経験をさせてもらって、自分の中でも乗り越えられたという思いはあるんですけど、正直、それがここにつながっているな、ここに活きているなというのがない。活かさなきゃいけないのはわかっているのに、どういうふうに活かしたらいいのか……。何を言うことが、どういう行動をすることが、経験を後輩に伝えることなのか、わからないんです。それがちゃんとできていたら、シーガルズがああいう結果にはならなかったと思うんですけど……」

 岡山シーガルズは2016-17V・プレミアリーグで7位に沈み、チャレンジマッチ(入替戦)で敗れてV・チャレンジリーグIに降格となった。宮下はその責任を背負い込んでいる。今季の全日本が、宮下にとって、積み上げてきた経験をアウトプットする方法をつかむ場にもなればいいのだが。

【次ページ】 “スピード”はセッターだけの責任ではない。

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