パラリンピックへの道BACK NUMBER
リオ五輪候補や、今井メロの弟が。
パラ陸上で再び夢を追いかけて。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKyodo News
posted2017/06/23 07:30
競技は違えど、陸上のトラックで躍動できる……その思いが中尾にとっての最大のモチベーションなのだろう。
成田童夢、今井メロの弟も走り幅跳びに出場。
その前日には、男子の走り幅跳びが行なわれた。クラスの異なる選手たちが一堂に会して競技が実施される中、リオデジャネイロ・パラリンピック銀メダルの山本篤らと、にこやかに言葉を交わす選手がいた。
成田緑夢(ぐりむ)だ。スノーボード・ハーフパイプでオリンピックに出場した成田童夢、今井メロの弟だ。
兄や姉と同様にスノーボードに取り組みつつ、それにとどまらず、夏冬のさまざまなスポーツに打ち込んでいた。トランポリンではロンドン五輪の日本代表候補となり、2013年、フリースタイルスキー・ハーフパイプ日本代表として世界選手権に出場した。その翌年のソチ五輪出場も、決して遠い夢ではなかった。
だが、世界選手権のあとの4月、トランポリンをしているときに負傷。左足膝下麻痺となった。
ハーフパイプ復帰とともに、パラリンピック競技も。
それでもスポーツから離れることはなかった。ハーフパイプに復帰を果たすと、2020年の東京五輪で競技入りを目指していたウェイクボードにも取り組む。
さらに、夏冬のパラリンピック競技も始め、この日、走り幅跳びで出場。5m66で2位となった。成績もさることながら、跳ぶことが楽しそうだった。
怪我したあとの時間にどのような心中にあったのか、どんな思いを抱いたのか、中尾、成田の大会での表情からはうかがい知れない。ただ、気の落ちたときもきっとあっただろう。淡々とはいられなかっただろう。それでも、そんな時間があったとは感じさせない笑顔があった。