パラリンピックへの道BACK NUMBER
リオ五輪候補や、今井メロの弟が。
パラ陸上で再び夢を追いかけて。
posted2017/06/23 07:30
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Kyodo News
6月10、11日に東京・駒沢陸上競技場で日本パラ陸上選手権が行なわれた。
7月14日に開幕する世界パラ陸上の日本代表選手らが顔をそろえる中、11日に行なわれた車いすの女子100mで、懐かしい顔を見た。別種目での姿を見ていたから、ある意味、新鮮でもあった。
中尾有沙という選手だ。
以前はオリンピック種目である三段跳びや走り幅跳びの選手だった。熊本を拠点に、競技人生を歩んでいた。学生の頃から全国大会に出場を続けていた中尾が栄冠をつかんだのは、2015年のことだ。8度目の出場となった日本選手権の三段跳びで、自己ベストを18cm更新する13m09を記録して、27歳での初優勝を手にした。
「まさかという感じでびっくりしています。世界と離れている種目なので、少しでも近づけるように頑張ります」
翌年には、リオデジャネイロ五輪が控えていた。それだけに、笑顔を浮かべてこう話していたのだ。
五輪イヤーに脊椎損傷、それでも「もう一度」。
しかしオリンピックイヤーが幕を開けた2016年1月。中尾は筋力を鍛えるためにバーベルを使ったトレーニングをしているときに転倒し、負傷する。
搬送先の病院で、脊髄を損傷していること、今後は歩くことはできないことを告げられた。それは跳躍競技に打ち込む時間の終わりでもあった。
手術、そしてリハビリの日々が続いた。その中で「もう一度スポーツへ」という思いが湧いた。たどり着いたのが、車いす陸上の世界だった。昨秋、練習を始め、今年5月に初めて大会に出場。3度目の大会となった日本パラ陸上の100mで、2位に入った。
「とても懐かしい気持ちでした」
戻ってきたトラックに、笑みを浮かべた。