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大一番で川島永嗣起用に根拠あり。
ハリルの決断を支える6人の名参謀。
text by
高橋夏樹(Number編集部)Natsuki Takahashi
photograph byGetty Images
posted2017/06/06 17:00
ハリルホジッチ監督とともにベンチから声をかけるエンヴェル・ルグシッチGKコーチ(右)。彼らチームスタッフの団結は固い。
試合に出ず評価できない川島の何を買ったのか?
彼らは選手の試合をチェックすると、その出来を5段階で評価している。良いほうからブルー、グリーン、オレンジ、イエロー、レッド。毎試合評価を続けると、その選手の安定性が一目瞭然になる。
ただ、試合に出ていなかった川島にはその評定表も作りようがない。
UAE戦に彼の出場を決めた経緯を、ルグシッチGKコーチはこう話してくれた。
「UAE戦の5、6日前。ヴァイッドは私と浜野コーチに、今どのGKが一番いい状態か、と聞いてきました。西川周作、林彰洋、川島はいずれもいい準備をしてくれていました。特に川島はフランスで出場機会に恵まれていない状況にもかかわらず、パーフェクトな素晴らしい練習を見せてくれて、誰よりもいい状態でした。私たちがそうした見解を述べたうえで、最終的にはヴァイッドが判断したのです」
結果はご存知のとおり、UAE、タイをともに完封。ルグシッチコーチも「結果的に、永嗣がこの2試合のベストプレーヤーだったと思います」とほほ笑む。
冷静な評定の中に垣間見える「気持ち」という要素。
調子を取り戻した川島は、メスに戻ってからも出場機会を得られるようになってくる。そして、ルグシッチコーチはその姿もしっかりと確認していた。
「メスに2週間近く滞在して永嗣を見てきました。彼は日々の練習でも、100%ではなく120%でトレーニングするプロフェッショナルな姿を見せてくれました。その期間にリザーブリーグと公式戦、合わせて3試合を視察しました。パリSGとの試合は2-3で敗れはしましたが、とても良いプレーでした。その試合結果だけを見れば、評定はグリーンだったかもしれません。けれど、そこまでの彼の状況を考えると、私自身も彼が試合で活躍していることがとても嬉しくて、ブルーをつけたんですよ」
あらゆる角度から検討し、戦い方に合うプレーヤーを冷静に評定していく、ハリルジャパンの選考方法論。だがその中に垣間見えた「気持ち」が、選手とチームの関係を支えているのかもしれない。