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1年2カ月の空白は何を変えたのか。
桃田賢斗が復帰戦で選んだ新戦術。
posted2017/06/03 07:00
text by
鈴木快美Yoshimi Suzuki
photograph by
AFLO
フィジカル全開! テク封印! おそらく最初で最後になるであろう、今回限りの特別プレー。
なんの話か、というと、日本ランキングサーキットで優勝した桃田賢斗のプレーである。
もうこんな勝ち方を見ることはできない。そんなふうに感じさせた。
違法カジノ店での賭博行為で、無期限の試合出場停止処分を受けた元世界ランク2位が1年2カ月ぶりに公式戦に臨んだ。
桃田は問題発覚後、約2カ月間、香川の実家に戻って一切ラケットを握らず、帰京してからは「6時半に起きたあと電車に乗って会社に行って仕事。2時半に体育館に行って5時半まで練習。その後はごはんを食べて寝る」という毎日を送っていたという。
日本での練習時間は、処分前と同じだ。しかし、変わったのはトレーニング内容。毛嫌いしていたという走り込みと筋トレに励んで、体重は約3キロ減。こけた頬と肉が削げたシルエットは地道な鍛錬の跡があった。
「今までフィジカルより技術で勝負していた。でも真剣に自分と向き合って苦手なこともやろうと思った」
速く動けるということは、主導権に繋がる。
この結果、プレーの質は変わったという。
「長いラリーになっても体の軸がブレない。すべてのショットがワンテンポ早くなったから、余裕もできて主導権を握れる。前だったら、がむしゃらに打っていたスマッシュも相手を見て打てている」
もちろんメリットばかりではなく、「速く動けるようになった分、シャトルとのリズムが合わない。とくにネット前での細かいショットはコントロールできないことがある」ともしている。だがこれは修正可能で、進化の副産物に違いない――たしかな前進を遂げている。そう強く印象付けた。