マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
源田壮亮は即戦力だとあれほど……。
開幕前にうなだれていた時の思い出。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2017/06/02 07:00
西武ライオンズにとってショートは懸案の課題だった。その席にぴったりハマった源田壮亮、もはや地味とも呼べない存在感だ。
いちばん自信があった守備を直されてガックリ。
春の宮崎・南郷キャンプ。
練習の合間に一休みしていた彼に会った。
愛知学院大の時に初めて取材に行って、そこからトヨタ自動車での2年間、試合で練習で、何度も顔を合わせていた。
「守備を直されました……」
源田がガックリとうなだれていたから驚いた。
いちばん自信があって、今まで一度も修正されたことのないフィールディングを、1年目のキャンプの最初のところで、さっそく辻発彦監督から“ご指導”があったという。
打球に向かって動く時の、グラブの使い方にムダがある。そんな内容の指導を受け、グラブをいつも見えている位置で使う意識で直そうとしているという。
その言い方がとても落胆しているように見えたので、だいじょうぶかな……と思ったが、その直後の守備練習を見たら、ぜんぜん大丈夫。
いつものように、今までのように、オレがいちばん上手いのさ、そんな雰囲気を漂わせながら、いかにも源田らしい、力の抜けた、柔らかい、しなやかな身のこなしで打球を拾い、よどみなく、サッと投げていた。
源ちゃんらしいね……。
ニヤッとしたら、たまたま目が合って、向こうも向こうで、意味ありげにニヤッと返してきた。
裏ではダメな話をしてるのに、いざ野球となると。
今までも、いつもそうだった。
ボクはパワーがないんです……、ボクは根性がないんです……、ボクなんか、ぜんぜんダメなんです……。
フニャフニャっとした口調で、“ダメな話”ばかりしてくるのに、いざ野球となると、なっかなかエラーはしないし、長打はなくてもピッチャー返しや三遊間へ、アッと思うような痛烈な打球を弾き返し、こんなに頼りになる選手もいませんよ。大学でも社会人でも、指導者の厚い信頼を得てきたヤツだ。