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「僕は目立たなくていい」守護神。
西武・増田達至は温和な人、でも。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKyodo News
posted2017/06/01 07:30
今季プロ5年目のシーズンを送る増田。辻新監督の下、抑えの切り札としてフル稼働している。
スライダーのような回転で投げ込まれるストレート。
敗戦を引きずらないよう、切り替えも早くするよう心掛けていると話す。
「もし打たれたときは、その日のうちにロッカーで何がアカンかったのか振り返って、キャッチャーや監督などと話します。球場を出るときには忘れるようにしています。次の日も試合があるので……。次の日には万全の状態で試合に臨めるように」
言葉にするのはたやすいが、実践するのは難しい。ストレスから胃を壊したり、イップスに陥る投手も少なくない。過酷な役割だ。
増田の長所についてブルペンキャッチャーを務める荒川雄太は語る。
「スライダーのような回転のまま、スライドする前にミットに届くストレートを投げるんです。それが増田のいちばんの武器でしょう。ブルペンでそのストレートが出ているときは、試合でも打たれることはまずないですね。160キロ近いボールはバットに当てることができる打者でも、増田の150キロ前後の、あのストレートをバットに当てるのは難しい。振り遅れていますよね。あんなストレートを投げる投手を僕は他に知りません」
握りはフォーシームでも独特な回転を見せるストレートに加え、140キロを超える高速スライダーで打者を抑える。荒川は続けた。
「増田の実力を思ったら、まだまだもっと上を目指せると思います。それくらい、潜在能力が高い投手です」
「チームに溶け込めないで終わる気がします、ハハ」
侍ジャパンの候補に名前が挙がったこともあるが、最終選考には残らなかった。そのことを増田に尋ねると、複雑そうな表情になった。
「もし選んでいただいたとしても、たぶんチームに溶け込めないで終わる気がします、ハハ。目立ちたい欲? 全くないですね。僕、地味ですから。誰にも取り上げられずにひっそりと終わりたいです」