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伊達公子46歳、復帰戦での喜び。
「何より1ポイントが取れました!」
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byKyodo News
posted2017/05/12 12:00
これまでも伊達は困難にぶつかっては、それを乗り越えてきた。膝の回復具合も上々だ。だから、今回の復帰も……と信じたい。
どのシーンを見ても、楽しそうに見える伊達。
ランキングに復帰するには最低でも3大会を戦うか、10ポイント以上を獲得しなくてはならない。つまり、まだ伊達は来週のランキングには復帰できない。
自力で勝ち取った1ポイントの喜びが、その一歩が前に進むエネルギーになるなら、途中棄権に終わった韓国への遠征も十分に意味のあるものだっただろう。
実際、驚くことに、テニス自体は松山よりも岐阜、岐阜よりも韓国、と“伊達らしさ”が戻ってきている。そして、どのシーンを切り取っても楽しそうに見える。
今後については、「しばらくは目標を探しながらにしようかな」と少しのんびりしたことを口にした。
ケガで戦列を離れる選手のための救済措置である『スペシャルランキング制度』により、復帰の日から1年間にわたって伊達は申請時の“193位”を使って8大会にエントリーすることができる。
グランドスラムは2大会まで。これを有効に使うことがスケジューリングの上では重要になる。
ゆっくり、一歩ずつ、が46歳の今の身上だ。
錦織「150%くらいの力でテニスに取り組んでいる」
少し話がそれるが、男子の選手にトミー・ハースという元世界2位の39歳がいる。
テニスファンなら知らぬ者はいない。高い才能を持ちながらケガに苦しみ続け、昨年9度目の手術をして今再びコートに立っているのだが、錦織圭のジュニア時代からIMGアカデミーの先輩であり、錦織の成長に大きな影響を与えた人でもある。
5大会ぶりのグランドスラム出場となった今年の全豪オープンで、錦織はそのハースについてこう話した。
「あの姿勢は誰よりも尊敬しますね。あれだけケガをして、手術をして、プラス年齢を考えたら、僕が知っている中では、伊達さんに近い感じ。150%くらいの力でテニスに取り組んでいる姿勢は、もう尊敬しかないです」
兄貴分といってもいいハースへの思いから出た言葉だが、同時に、これ以上に説得力のある伊達評があるだろうか。
伊達はすでに丸1年、コートから遠ざかっていた。あそこで不意に伊達の名前が出たのは、錦織がリハビリ中の伊達の「150%」を知っていたからに違いない。