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伊達公子46歳、復帰戦での喜び。
「何より1ポイントが取れました!」
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byKyodo News
posted2017/05/12 12:00
これまでも伊達は困難にぶつかっては、それを乗り越えてきた。膝の回復具合も上々だ。だから、今回の復帰も……と信じたい。
未知の厳しい戦いに、自ら飛び込んでいった伊達。
グランドスラムの準決勝を3度も戦った元トップ選手が、こんな経験をしてまでゼロから出直した例が過去にあるとは思えない。
まずはワイルドカードを得られる大会だけである程度ポイントを稼いでから、たとえツアー下部大会でもせめて本戦に出場できるところを選ぶというやり方もあるはずだ。
しかし、伊達は「練習だと思い込むことにする」と割り切って、あえて未知の厳しい環境に飛び込んだ。実戦に飢えていること、わずかでもチャンスがあるなら挑まずにはいられない性分が、その選択をさせたのではないだろうか。
ちなみに、今週は博多でも6万ドルの大会が行なわれているが、“世界から浮いている”日本独特の砂入り人工芝コートなので目もくれなかった。
棄権の理由は膝ではなく、肩の痛み。
結果、韓国では予選の3試合を簡単に勝ち抜いて本戦出場を果たしたのだが、本戦の1回戦を第2セットで途中棄権した。
岐阜の3週間前、愛媛の松山で日比野菜緒とエキシビションマッチを戦ったときから、膝には再発の不安を抱えていたが、棄権の理由は膝の悪化ではなく、右肩の痛みだという。
そのことを本人は前向きにとらえている。
「膝の調子がいいのはうれしい。復帰したばかりでまだ筋肉も体力も十分についていないので、いろんなところに痛みが出てくるのはしょうがない」
つまり、後戻りではなく復活の“途上”であると考えているのだ。英語と韓国語の通訳を介したインタビューで、伊達はこう続けた。
「今回、予選で3試合勝てたことは大きな成果だし、何より1ポイントが取れました!」
ワイルドカード選手の1回戦負けにポイントは付与されないが、予選突破ならポイントがつく。格の低い大会ゆえわずか1ポイントだが……。