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「今呼ばれたら、むしろ俺は嫌」
武藤嘉紀の代表より大切なこと。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAFLO
posted2017/03/23 11:30
復帰後はまだ無得点。代表からも少々遠のいている。それでも武藤はマインツでの定位置争いに集中し、ゴール量産の時へ牙を研ぐ。
ハリル監督は「とにかく点に絡め」と明確な要求。
それだけに日本代表復帰も現実味を帯びていたが、UAE戦、タイ戦を戦うメンバーからは外れた。ハリルホジッチ監督は「試合に出場していない選手は招集しない」 と明言していたこともあって、武藤の招集外を疑問視する世論の声は小さくない。しかし、本人はさっぱりとした表情で言った。
「ハリルさんがフランクフルトに来て、宇佐美や浅野とご飯を食べたとき、『とにかくお前たちは試合に出場して点に絡め』と言われました。だから、今の僕が選ばれるとは思っていなかった。むしろこれで呼ばれたら、俺は嫌でした。結果が出ていないし、すべての試合でフル出場しているわけでもない。ただ単に海外でやっているだけで(代表に)呼ばれてしまう……そういう甘い世界じゃないと思っていたから。
悔しさはあります。代表までに結果を出せなかった自分の不甲斐なさを感じるし、ここから這い上がってやるんだという悔しさがある」
今は実力不足、アピール不足だとわかっている。
武藤が今、抱えているジレンマがあるとすれば、それは日本代表のことではなく、マインツでレギュラーポジションを確保できていないということに尽きるだろう。
「今は本当に調子も良いし、練習でもかなりキレている。先発じゃないというのは辛いですけれど、ここで踏ん張らなくちゃいけない。今は自分の実力不足だし、アピール不足だとわかっている。もう一度、チームで自分のポジションを確保するためにやっぱり仕事をしないといけない。次のリーグ戦までの2週間、練習試合もあるので、自分が今一番フレッシュで、一番キレているところをしっかりと見せたい。
そして、あとは得点。ホントそこに関しては貪欲にならないといけない。自分の価値を高めるのは、ゴールやアシストだけだと思っているから。今みたいにクラブで試合に出られないのは、プロになってこれまでで初めての経験。だけど、これは成長できるチャンスだし、選手として絶対にいい体験だと思っている。ここで踏ん張って、誰よりも努力していきたい」