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なぜ補欠から突然キャプテンマーク。
吉田麻也が試合後の謝罪をやめた理由。 

text by

西川結城

西川結城Yuki Nishikawa

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photograph byAFLO

posted2017/03/16 08:00

なぜ補欠から突然キャプテンマーク。吉田麻也が試合後の謝罪をやめた理由。<Number Web> photograph by AFLO

イブラヒモビッチと激しい1対1を繰り広げた吉田麻也。スピードで振り切られるシーンも激減し、すっかりスタメンに定着している。

失点直後に下を向いていた吉田はもういない。

 時が経ち、今ではプレミアのクラブで味方に指示や檄を飛ばす選手になった。ユナイテッドとの決勝でも、失点直後に彼が見せたのは、仲間への注意や叱咤、そして鼓舞だった。かつて、代表戦で失点直後に顔をガクッと下に落としていた吉田は、そこにいなかった。

 常に彼は言い続けてきた。

「センターバックは、1つのミスが失点につながる。89分完璧でも、1分で全てがフイになることもある」

 切ない役回りである。だからこそ、どのポジションよりも図太く、強気でいないといけない。それこそが、吉田がヨーロッパに移ってから、最も変化した一面である。

謝罪すれば、その場を収めることはできるけれど。

 ある質問をぶつけてみた。

「最近、囲み取材やメディアの前で、失点やミスに対して謝るような素振りをあえて見せなくなった。日本人は潔く非を認めるのが美学なところがある。なのに、なぜなのか?」

 吉田が、その深いわけを語った。

「何でも“ヨーロッパかぶれ”になろうなんて思いません。僕は周囲に配慮する日本人の気質をすごく大事にしたい。でも、プロサッカー選手として戦う上で、やっぱりこっちの選手たちの強気で自信に満ちた態度は大事だと痛感したんです。ミスに対して、反省や謝罪を求める風潮は、ヨーロッパよりも日本の方があるかもしれない。でも、例えばプレミアでプレーしている選手がそういう態度を公に見せるかと言えば、ほとんどしない。

 特にセンターバックは、それをやっていたらキリがないポジションなんです。誰よりも失点に絡んでしまう役回り。毎試合後に『あそこで止められなかったのは自分の責任です。修正したい』と言うのは簡単ですが、グッとこらえて上を向く発言をすることも、僕らにとっては大事です。ネガティブな話をすると、その場を収めることはできる。でも結局自分のためにならない。その態度だと、絶対に高いレベルではやっていけない。それを僕は周りの仲間から学びました。

 反省や修正点は、誰よりも自分がよくわかっています。口にしないからミスや課題に蓋をするなんてことではない。自分の中でしっかり見つめ直し、突き詰める。日々、その作業の連続です。でもそれができていればいいと思います。試合では、いつだって胸を張ってプレーする。その気持ちを今は大事にしたい」

【次ページ】 だからこそ、必ずまたこういう舞台に戻ってきたい。

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吉田麻也
ズラタン・イブラヒモビッチ
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