プレミアリーグの時間BACK NUMBER
レスターはラニエリのクビを切るか。
降格危機で試されるクラブの品格。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2017/02/11 11:30
昨季はあんなにも輝いていたラニエリの飄々とした表情も、今季は心なしか頼りない。それでも解雇はあまりにも……。
冷静に戦力を比較すれば、降格を避ける道はあるはず。
更に言えば、冷酷非情なオーナーというイメージが強く、実際にチェルシーでラニエリを解雇した過去を持つロマン・アブラモビッチでさえ、レスター・オーナーの立場であれば今季中の解任は躊躇ったのではないかと思える。レスターにとってクラブ史上初のリーグ優勝は、チェルシーの2011-2012シーズンでのCL初優勝に勝るとも劣らぬインパクトを持つ。実際アブラモビッチも、明らかに高く買ってはいなかったロベルト・ディマッテオ暫定監督に対し、正監督として翌シーズン続投を認める恩情を見せている。
結果的には成績不振で半年後に解雇しているが、それはチェルシーでの最低要求がトップ4レベルであるため。レスターの現実目標は、降格の危険が高まる前からプレミアのステータス確保にあったはずだ。
残留争いのライバルと目されるサンダーランド、クリスタルパレス、ハル、スウォンジー、ミドルズブラと比べても、降格を避けるだけの力は十分。わずか2年前に残留バトルで生き残った経験も備わっている。その戦力を引き出す監督として、ラニエリよりも相応しい人物などいるだろうか?
国内で降格の危機が高まる中で忘れられがちだが、2月22日にセビージャとの第1レグを控えている欧州では、グループ1位でCL16強へと今季のレスターを導いてもいるのだ。
「できすぎ」の翌季は誰にとっても難しい。
もちろん、プレミアでの苦戦が続いている事実は否定できないが、「できすぎ」と言うしかないシーズンを過ごした翌季に、安定したパフォーマンスをリーグ戦で重ねることは、口で言うほど簡単ではない。「祭りの後の寂しさ」は強烈だ。
試合前後の会見で「我々はファイターだ」と繰り返すラニエリは、選手たちに「目を覚ませ」と言っているかのよう。
チームの守護神でリーダー格のカスパー・シュマイケルも、マンU戦後に「昨季のチャンピオンとして恥ずかしすぎる。毅然とした態度で戦うしかない。さもなければ降格だ」と、テレビカメラの前で語り、自身とチームメイトたちに発破をかけていた。もし昨季王者らしからぬ醜態の責任を監督になすりつけて平気な選手がいるとすれば、彼らこそレスターでの我が身に不安を覚えるべきだ。