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サイ・ヤング賞左腕が歌手デビュー。
大リーガー、数奇な第二の人生。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2017/01/08 11:00
ジートは2015年に全盛期を過ごした古巣アスレチックスで引退。'02年には23勝5敗で最多勝とサイ・ヤング賞に輝いた。
かつて7年総額1億2600万ドルの契約を結んだ男が……。
アスレチックスでメジャー屈指の左腕に上り詰めたジートは、その後フリーエージェントとなって、2006年の12月に隣町サンフランシスコのジャイアンツと7年総額1億2600万ドルの大型契約を結んだ。
その後は度重なる故障に苦しんで先発ローテから外されることもあったが、2012年のワールドシリーズでは、やはり元サイ・ヤング賞投手で不調だったティム・リンスカムに代わって第1戦に先発し、ア・リーグ王者のタイガースから勝ち星を挙げるなどして優勝に貢献した。
ジートが書いた「Secret of Life」は米国で根強い人気のあるカントリー・ソングだ。メタリカやガンズ・アンド・ローゼズがカントリーの楽曲を自分たちのアルバムに入れているぐらいだから、そのことにも驚きはない。面白いのはジートとカントリーが急接近した過程に、少なからず野球が絡んでいることだろう。
「カントリーを好きになり始めたのは妻の影響だ」
プロ野球選手ジートにとって最後のシーズンとなった2015年、彼は古巣アスレチックス傘下のAAA級マイナーのナッシュビル・サウンズにいた。そう、ナッシュビルは「カントリー・ミュージックの聖地」と呼ばれている場所である。当時の彼は地元紙にこんなことを話している。
「カントリーを好きになり始めたのは妻の影響で、今から4年ぐらい前のこと。この街に来ていろんな人に会って、自分が曲を書きたいんだという確信を得たし、いつかこの街にまた戻ってくるだろうとも感じた。今の僕はサンディエゴの自宅で家族と過ごしながら曲を書いて、ここにいる人たち(音楽関係者)と一緒にそれを発表することが夢なんだ」
ミュージシャンのジートほど派手ではないが、世界最大の都市ニューヨークを拠点にしているため、注目される元選手もいる。
2016年12月9日に地元の警察学校を卒業したアンソニー・バーバロ元投手(32歳)だ。