サムライブルーの原材料BACK NUMBER
源昌子の“すべらない”守備の話。
スライディング無しで守る方法論。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/01/08 11:30
急激な成長を見せ、いまや誰もが認める鹿島のディフェンスリーダーになった昌子源。イチかバチかより、DFには大切なものがあるのだ。
大袈裟にすべる時は、大体時間稼ぎのため。
自分の都合で無茶はしない。
体を寄せてシュートコースを限定して、シュートを打たせて曽ヶ端が止める。ゴールを割らせなければそれでいい。
チャンピオンシップ準決勝の川崎戦では、ゴール前に侵入してきた中村憲剛に対して、珍しくスライディングでシュートを防ごうとした。切り返されてシュートを打たれたものの、これはセンターバックの相棒ファン・ソッコを間に合わせるための時間稼ぎで、わざと大袈裟にスライディングを試みたのだった。連係を重視する彼らしいプレーであった。
これらは、相手がシュートを打つ最終局面での判断を語った話である。しかしながら、そもそも昌子はすべらなくてもいい状況に持っていくことができる。事前にシュートチャンスの芽をつむことができる。
ロナウドやメッシのドリブルが昌子の仮想敵だった。
象徴的なシーンが、クラブワールドカップでの決勝レアル・マドリー戦。2-2で迎えた後半42分、カウンターを受けてC・ロナウドと1対1になったが、仕掛けてくる相手に対して間合いを詰めて右足でボールを突っついて危機を逃れている。
対応を間違えていたら、シュートまで持っていかれていた。最終的にはイチかバチかですべってシュートブロックしなければならなかったかもしれない。
実は1年半前の「すべらない話」をしてくれた際、昌子はC・ロナウドの名前を出していた。
「C・ロナウドやメッシには、チョコチョコとかわす切り返しがあって、ついていけなかったら意味がない。もし足が遅くても、最初の1歩目が相手に近くてちょっとでも触れたら、相手が思い描くリズム、ドリブルのコースを外せると思うんです。世界と戦ううえで、そういうところが大事になってくる」
チョコチョコかわす相手の技についていけるだけのアジリティーが、昌子の何よりのストロングポイント。加えてスピード、パワー、体の使い方、そして判断。そう、C・ロナウドを偶然止めたわけではない。世界と戦うイメージを働かせ、その準備をずっとしてきたからこそあの大事な場面で防ぐことができたのだ。