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“高校球児・中村晃”は邪険だった。
それでも周囲に愛される、素の男。 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byKyodo News

posted2017/01/06 07:00

“高校球児・中村晃”は邪険だった。それでも周囲に愛される、素の男。<Number Web> photograph by Kyodo News

ソフトバンクで、柳田悠岐に次ぐ出塁率を記録した2016年の中村晃。この安定感は彼が一流の証である。

最近は笑顔を上手に作れる球児が増えたが……。

 3年続けて3割を打っていた中村晃が、今季は0.287に終った。それでも、年俸は25%アップの1億5千万に増額と伝えられた。

 4年間、大きな故障もなく、コンスタントに働いたこと。打率は下がったものの、0.416の出塁率で見事に打線をつないだ貢献度。さらに、外野手としても一塁手としても、守備率9割9分台をマークする間違いのないディフェンス。昇給の理由はいくつもあったのだろう。

 メディア受けするコメントを発し、さわやかな笑顔を上手に作れる球児が、取材の現場にすごく増えたと思う。そのぶんプロに進んでから、いとも簡単に荒波に粉砕される若者たちも、以前よりずっと多くなった。

 アマチュアの間ぐらい“素”で生きればいいのに……。囲み取材の彼らの顔を少し遠くから見ながら、そんな思いにかられることも正直、多い。

 うわべを繕う知恵があるなら、その力を、自分の幹を太くすることに費やそう。

 人からどうかわいがられるかを気遣うより、懸命に磨いた自分の“素”を愛される存在になろう。

 うわべはすぐにはがれ、衰え、朽ちていくが、自ら培った幹と素の寿命はびっくりするほど長いものだ。

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