マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
“高校球児・中村晃”は邪険だった。
それでも周囲に愛される、素の男。
posted2017/01/06 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
こう見えて、私は“プロ野球スカウト”になりたい男である。
もっと正しく言えば、プロ野球スカウトとして働きたい男である。
今のような仕事をかれこれ20年ほど続けているのも、その前に、ある球団のパートタイムのスカウトとして7年間活動していたのも、さらにその前10年ほど、時のドラフト候補を探しながら土地、土地の好素材を追いかけるような野球の見方をしていたのも、どれもこれも、将来プロ野球スカウトとして存分に働くための「勉強」のつもりでしていたことだ。
もちろん、今だって、その“こころざし”は不変である。
どこかの球団のどなたかが、「そんなに言うんなら使ってみるか……」と気まぐれにでも声をかけていただけたなら、ペンをたちまち放り投げ、その日からすぐ動きます!
実は、そういう思いで日々を過ごしている。
自信? あるに決まっている。
特に、皆さんが「難しい……」と泣きを入れている打者に関しては、今だから言うわけじゃないが、私には“実績”がある。
たとえば今季、各球団で主力として働いた打者たちの中で、アマチュア当時に“見間違えた”のは、糸井嘉男(阪神)、丸佳浩(広島)に村田修一(巨人)ぐらい。鈴木誠也、菊池涼介、田中広輔(広島)、山田哲人、川端慎吾(ヤクルト)、柳田悠岐(ソフトバンク)、秋山翔吾(西武)に、BCリーグからプロ入りした角中勝也(ロッテ)にいたるまで、ほとんど無名だったアマチュア当時の彼らを、私は周囲からの疑念の目を感じながらも、痛烈に支持する記事を発信し続けてきたのだ。
王貞治、駒田徳広らに負けない中村晃の守備。
自慢ばなしが長くなってしまった。
そんな中の、トップクラスの“優等生”に、帝京高・中村晃もいた。
その頃で、175センチもなかったろうか。目立つほど大きくはなかったが、帝京高の縦じまのユニフォームでもスリムに見えないほどのしっかりした骨格と筋肉量を持ったボディーラインが目をひいた。
さらに一塁を守って、そのフィールディングの見事なこと。一、二塁間に飛んだゴロをファーストミットを地面に滑らせるように低く使って柔らかく吸収し、低い姿勢のまま二塁送球できる柔軟、強靭な下半身のこなし。
一塁手のフィールディングを見て、「上手いなぁ」と思ったのは、昔なら王貞治さん(巨人)であり、駒田徳広さん(巨人)であり、アマチュアなら法政大当時の稲葉篤紀さん(ヤクルトほか)の流麗な動きも見事だったが、中村晃の身のこなしだって、ぜんぜん負けていなかった。