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2020年へ若き女子柔道家が躍動。
グランドスラム東京で光った5人。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2016/12/11 08:00

2020年へ若き女子柔道家が躍動。グランドスラム東京で光った5人。<Number Web> photograph by AFLO

東京五輪に向けての有力候補に躍り出た阿部詩。一二三との兄弟での同時出場に向けて着々と実力をつけている。

寝技重視で「毎日、コロコロしてました」。

 だが、大学で少しずつ地力をつけ、学生の全国大会で活躍するまでになった。柔道部のOBから寝技を教わったのが飛躍のきっかけだった。「毎日、コロコロしてました」と練習の日々を振り返る。

 実業団入りした昨年は、6月に右膝を手術。長期間にわたって大会から離れたが、今年3月に復帰した。サンボや柔術も学びながら磨いた寝技を武器に、講道館杯、グランドスラムを制し、52kg級の有力選手の1人に躍り出た。

「今は、柔道だけを頑張りたいです」と、再び笑顔を見せた角田。手にしたものは大きかった。

 63kg級では、19歳の嶺井美穂が優勝こそ逃したものの、リオ五輪金メダリストのトルステニャクに有効を奪って勝利するなど価値ある結果を残した。その嶺井は高校2年時に世界ジュニア、講道館杯で優勝するなど「リオも狙える」と有力候補として話題となった。

 しかしその後は、度重なる負傷に苦しみ、こちらも手術を経て今年9月に練習を再開しての今大会だった。それだけに「スタートラインに立つことができました」と、再起への第一歩を踏み出せたことを噛みしめた。

78kg超級の朝比奈と素根も見ごたえある戦い。

 78kg超級を制したのは20歳の朝比奈沙羅だ。2012年に15歳にして全日本選手権3位となるなど将来を嘱望されたが、故障などもあって足踏みが続いた。だが今大会では、リオで銅メダルの山部佳苗に初勝利を挙げての優勝となった。

「やっと勝つことができました」と喜びを示した朝比奈は、1つ殻を破ることになった結果に、「タイトルを獲ることができたのは、飛躍につながります」と自信を深めた。

 ただ、安閑とはしていられない。朝比奈が決勝で戦ったのは高校1年生の素根輝(そね ・あきら)。162cmとこの階級では小柄な体格となるが、その分、相手の懐にもぐっての技を特徴とする。昨年は17歳以下によって争われる世界カデ選手権に唯一の中学生として出場、全試合一本勝ちで逸材ぶりを見せつけた。

【次ページ】 「東京では兄と2人で絶対に優勝したい」(阿部)

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