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初の王者戴冠5日後にF1引退発表!
ロズベルグが衝撃の決断に至った経緯。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2016/12/08 11:15
近年は時に緊張関係が走ることもあったライバル、ハミルトン(右)についに勝利し、引退を決意したロズベルグ(左)。
「こんな経験はもう二度としたくないよ」
「ルイスのスロー運転、終盤の大混戦……最後の数周は少しでもミスして後ろの2人に抜かされてしまったら終わりだと考えながら、必死で戦っていた。楽しもうと思ったけど、まったく楽しめなかったし、本当に苦しかった。こんな経験はもう二度としたくないよ」
チャンピオンを獲得した夜、ロズベルグは両肩にのしかかっていたプレッシャーからようやく解放され、歓喜した。
そして、一夜明けた月曜日の朝、「引退」という決断を下した。
家族をはじめ、多くの犠牲の上にあった年間王者の座。
「まずビビアン(妻)とゲオルグ(・ノルテ/個人広報)に伝えた。失望の2年間を過ごした後、今シーズンに向けて、僕はすべてを変えた。それは僕だけでなく、家族にも多くの犠牲を支払わせる結果となった。
ビビアンは僕の夢を理解し、献身的にサポートしてくれた。レースとレースの合間に完璧に回復できるよう、僕のための特別な空間も用意し、娘の世話も毎晩しながら、家庭の問題を一手に引き受け、僕のチャンピオン獲得を第一に考えてくれた。彼女なしでは、ここまでやってこられなかった。本当に感謝している」
その後、ロズベルグはメルセデスAMGの事実上のチーム代表であるトト・ウォルフに打ち明けた。
「レースの世界における僕の家族であるメルセデス・チームが困ることになると思うと、それだけが気がかりだった。
引退を告げると、トトは了承してくれた。彼は僕の決断が揺るぎないものであることをすぐに理解し、納得してくれた。レースキャリアのなかで最も誇り高い成果は、シルバーアローの素晴らしい面々とチャンピオンを獲得できたことだ」