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アキレス腱断裂、戦力外通告の悲劇。
元ロッテ大松尚逸が選んだ「浪人」。 

text by

永田遼太郎

永田遼太郎Ryotaro Nagata

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2016/12/06 11:00

アキレス腱断裂、戦力外通告の悲劇。元ロッテ大松尚逸が選んだ「浪人」。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

かつて幕張の空に鮮やかな弾道を飛ばしていた大松。スタジアムに再びアーチを描く日が来るか。

周囲のためにバッターボックスに立ちたいの一心。

 医師が示した回復の目安から遅れるときが何度かあった。

「それでも、なんやかんやで帳尻は合ってくるんですけど、当時はそんなことも分からないから、その辺の焦りもありましたし、なんでこれだけの月日を費やしているのに、こんなことも出来ないんですかって医師に噛みついたときもありました。イライラもしましたね」

 絶望的とも言える状況の中、自分を信じて気持ちを前向きに頑張ってこれたのは、周囲で支えてくれた人達の温かい声だった。

「その人達のために、ただの一打席でもいい。もう一度、バッターボックスに立ちたい」

 そんな想いが背中を押した。

 そんな中、大松をさらなる悲劇が襲う。

 今年10月、所属していた千葉ロッテから来季の契約を結ばない旨を伝えられたのだ。

「来季を見据えた辛いリハビリはなんだったのかと」

「(戦力外を聞いた直後は)なんとも言えない気持ちになりましたよね。でも、この年(34歳)で大きい怪我をしたということは、チームの立場からしてみたら色々と考えなければいけなかったんでしょうし、自分がまだ若いんだったらまた違う選択肢もあったんでしょうけど、そうではないので……。そう考えて納得しようとする自分もいながら、一方で怪我をしてから今現在に至るまでの4~5カ月間、来季を見据えて辛いリハビリにもずっと耐えてきたのは何だったのかと」

 診断は全治6カ月。怪我をしたのが5月29日だから11月12日に行われたプロ野球合同トライアウトにはどうしても間に合わない。大松は腹を決めた。

「野球浪人」

 彼が出した答えはそれだった。

【次ページ】 11月に入っても、右足を引きずったままだった。

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