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年間216安打の翌年は「中途半端」。
西武・秋山翔吾は不器用で、誠実。
posted2016/12/05 11:00
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
NIKKAN SPORTS
'16年シーズンを振り返り、「すべてにおいて中途半端だった」と秋山翔吾は語る。
「盗塁は20個に行かなかったし、打率も3割に到達しなかった。何より優勝もできませんでしたからね」
思えば、'15年シーズンは秋山にとって、大きな転機となる年だった。シーズン通算216安打を残し、歴代安打シーズン記録を更新。'10年に阪神タイガースのマートン選手が記録した214安打を超え、プロ野球歴代最高記録を樹立した。
そんな'15年シーズンと比較すると、本人が評するように「中途半端」な成績だと感じるのかもしれない。安打こそリーグ3位の171本を記録したが、打率は2割9分6厘と昨年を大きく下回った。
ただし、野球にはこうした数字に表れない働きがある。チームへの影響力を考慮するなら、'16年シーズンの秋山は、下位に低迷するライオンズを鼓舞し、けん引した「貢献度の高い選手」と評価できるだろう。
ベテランに頼るのではなく、突き上げる存在に。
'16年シーズンの夏場、連敗が続き、苦しい戦いを強いられていたライオンズのある試合で、こんなシーンがあった。
ランナーを置いた場面で打席に立った森友哉が、クリーンヒットで続く。三塁へ進むランナーを刺そうと外野手がサードに送球した際に、迷うことなく森はセカンドを陥れた。
決して俊足とはいえない森だったが、積極果敢な走塁が勢いをつけ、チームは見事、勝利をおさめた。
試合後、記者に囲まれた森は言った。
「ヒットが出ないときこそ、足を使っていこう、常に次の塁を狙っていこうと試合前にいつも秋山さんにも言われていたので、あの場面も迷わず(二塁へ)走りました」