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年間216安打の翌年は「中途半端」。
西武・秋山翔吾は不器用で、誠実。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/12/05 11:00
今季は全143試合にフルイニング出場した秋山。2年連続3度目となるゴールデン・グラブ賞を受賞した。
要領が悪く、妥協するのも嫌いだった少年時代。
以前、秋山に自身の性格について尋ねたことがあった。要領が悪く、同じことをするにも人の2倍、3倍と時間がかかる子供だったという。その上、妥協するのも嫌いだった。どんなことも一度は試してみる。「この方法は自分に合わないのでは?」と疑問が頭をよぎっても、方向転換の決断を下すまで、納得するまでとことん練習する。おのずと練習量も増えた。そんな性格は野球以外にも表れている。
ちょうど1年前の今頃、1日に10社近い媒体の取材を受けていた。日本記録を更新した秋山にはテレビ、ラジオ、雑誌など様々なメディアが話を聞きたがった。秋季練習が終わったあと、それらの取材をすべて終え、球場を出るのが午後8時近くになる日もあった。
「特に疲労は感じなかったですね。楽しんで受けることができたなと今は思えています。誰かに話を聞いてもらえば、それが記事や動画という形となって後に残る。あの1年で野球人生が終わるわけじゃないですけど、自分がそのとき、感じていることを聞いてもらって、それを記録に残してもらえば、あとあと自分の財産になるかもしれません。“ああ、あのときはこんな風に考えていたんだなぁ”と」
やるべき練習に優先順位をつけることの大切さ。
今後、何かに迷ったときに、自分の発言が昨年の自分に立ち返るきっかけとなる。万が一、本業の野球に影響を及ぼすようであれば、それは次の機会から改善しよう。依頼された取材をすべて受けたのにはそんな理由があった。
「去年、感じたのは練習時間が例年より少なくなる中で、“これだけは押さえたい”と、やるべき練習に優先順位をつけることの大切さでした。自分で練習を選ぶことも大事なんだな、と……。ただ、野球に支障をきたすような忙しさではなかったですよ。確かに例年にはない忙しさではありましたけど」