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CS決勝直前、柏木陽介に漂う殺気。
きっかけは恩師の「何やっとんや」。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/11/29 11:30
今の柏木陽介に、「勝負弱い」と言われた頃の面影はない。川崎を破って決勝に上がってきた鹿島を、万全の体制で迎え撃つ。
勝つ、魅せる、主役の座は、己でつかむ。
最終節の横浜F・マリノス戦(11月3日)ではこぼれ球に反応して先制ゴールを決める活躍を見せ、引き分けながら年間1位を確定させた。
しかしながら翌日の代表発表において、オマーン戦、サウジアラビア戦のメンバーに彼の名前はなかった。
あれから3週間が経ち、彼はこう言った。
「やっぱりどこかで悔しさはあったし、気持ちを持っていくところで難しさも感じた。意外に落ち込んでしまったのはあったかもしれない。でも天皇杯、チャンピオンシップでしっかりやって、3月にまた代表メンバーに入るぞっていう気持ちを見せないといけないと思っていた。でも天皇杯は何もできなかったという思いがあるから、ここでしっかりやらないと。
代表のためにサッカーをやっているわけじゃない。でも俺みたいな選手も1人、絶対必要やぞ、とは思います。レッズでいいプレーをして、チームを優勝に導く。いいプレーを続けて、コンディションを落とさずに逆にもっと向上していく。そういうことができていれば、自ずと3月も見えてくる可能性はあるんじゃないかって。これで終わりじゃないっていう気持ちを持ってやっていくことが大事になる」
ひとつひとつの言葉にエネルギーが満ちていた。
かつての彼なら「悔しい」だけで終わっていたのかもしれない。しかし今の柏木陽介は違う。悔しさをすぐに向上心に変換し、目標への距離を近づけようとする。
ハリルホジッチ監督も視察に訪れる最後のチャンピオンシップ。
勝つ、魅せる。主役の座は、己でつかむ。
静かな殺気からは、決意のほどがビンビンと伝わってくる。