サムライブルーの原材料BACK NUMBER
CS決勝直前、柏木陽介に漂う殺気。
きっかけは恩師の「何やっとんや」。
posted2016/11/29 11:30
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
静かな殺気とでも言おうか。
チャンピオンシップ決勝第1戦の2日前、浦和レッズの大原サッカー場。
柏木陽介は全体練習が終わって居残りでFKに取り組んだ後、センターサークルを使って2度、3度とスプリントを繰り返していた。
年間1位のプライドに懸けて。
チームのタクトをふるう背番号10は、今回のチャンピオンシップにおける意義を大きな視点で語った。
「俺らからしたら、年間1位で終われたことが一番意味のあることだとは思う。でもチャンピオンシップがあるということは、全国の人に見てもらえるチャンス。Jリーグにもいいチームがいると思ってもらえればいい。その意味でもレッズらしいサッカーをして勝ちたい」
レッズのため、ひいてはJリーグのため。
飛躍しすぎた言葉には聞こえない。それほどの自負と自覚が、今の彼にはある。大きな視点こそが、彼の成熟と充実を物語っているのかもしれない。
今の柏木を語るうえで、代表は外せない。
強いレッズの象徴となってきた。
勝つために、圧倒するために、自分はいかにあればいいか。
攻撃のみならず、よく走り、バトルを厭わずしつこく守備をする。巧さの上にコーティングされた強靭を、一年通して保ってきた。ルヴァンカップを制し、年間勝ち点1位を勝ち取った。チームにとって自身にとって、今年の総決算がこのチャンピオンシップになる。
今の柏木を語るうえで、日本代表は外せない。
2012年2月以来となる代表復帰を昨年10月に果たして以降、メンバーに定着してきた。6月のキリンカップ、ブルガリア戦では岡崎慎司のゴールをアシストするなど3得点に絡む活躍を見せ、続くボスニア・ヘルツェゴビナ戦は前半のみで交代したとはいえ、左サイドで攻撃の起点となりながらリズムをつくることができていた。