マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフトでも、球場でも大人気の男。
中日1位・柳裕也の図太い変わらなさ。
posted2016/11/21 11:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
NIKKAN SPORTS
2016ドラフトで複数球団の重複指名が予想された明治大・柳裕也投手の1位指名は、フタを開けてみれば、中日ドラゴンズと横浜DeNAベイスターズの2球団だった。
しかし関係者の話をいろいろ聞いてみると、ある球団はドラフト直前の会議でスカウトたちに“投票”させたところ、柳裕也への投票が最も多かったにもかかわらず、監督の意向を優先してほかの選手を1位指名したという。いまだに「個人的には柳ですね……」と残念そうに語るスカウトが何人もいるように、“現場”の人気ということでいえば、彼が「ドラフトNo.1」の印象も強い。
“現場の人気”ということでいえば、スタンドに詰めかけるファンやリーグ戦の応援席での柳裕也の人気もそれはたいしたもので、スターティングメンバーで「柳裕也」の名前が読み上げられただけで、スタンドから拍手がもらえる学生選手など、もしかしたら「斎藤佑樹」以来かもしれず、この秋のリーグ戦でも、春・秋連覇を決めた立教大戦の試合のあとに、明治大応援席で湧きおこったのは、その日奮投をみせた星知弥ではなく「ヤナギ! ヤナギ!」というコールだったのである。
試合後に柳を待ち受ける記者は表情が違う。
さらにいえば、試合後に行われるメディアの囲み取材だ。
これが柳裕也だと、単なる質疑応答にとどまらない。彼を待ち受ける記者たちの表情が違う。まるで遠くの大学に進学し、たまの休みに帰郷したお兄ちゃんの帰りを待つ家族のような、そんな嬉しそうな表情で、みんなで彼を迎えるのだ。
やってくる柳裕也がまた、礼をわきまえつつも「ただいま~」みたいな、ごくごく自然な笑顔と、作ったところのない率直さで問いに応えてくれるので、実にフレンドリーなほのぼのとした“取材”が展開されていく。
明治大エース・柳裕也を悪く思う人は、そう見つからないはずだ。