炎の一筆入魂BACK NUMBER
秋季キャンプも広島伝統の猛練習。
有望株3人の“超早出”は朝8時開始。
posted2016/11/18 07:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
Hideki Sugiyama
日南の朝は早い。
朝8時、広島のキャンプ地、宮崎県日南市にある天福球場のライトポール下に6人が集まっていた。その6人とは、石井琢朗打撃コーチ、東出輝裕打撃コーチ、迎祐一郎打撃コーチ補佐と、強化指定選手に指名された堂林翔太、野間峻祥、安部友裕の3選手。選手だけでなく、3人のコーチも一緒になってランニングするところから1日が始まる。
通常9時から始まる早出練習よりも、1時間早い。「スーパー早出」と呼ばれている。
昨年の秋季キャンプは11月1日から始まったが、今年は日本シリーズ出場もあって11月8日スタートとなった。また、期間は1週間ほど短いため、東出コーチは「1日24時間じゃ足りない」と嘆くこともあった。「競争と調整」が主となる春季キャンプとは違い、秋は「個々の鍛錬」に重きを置くことになる。だからこそ、いかに短い期間で収穫を上げるか。その答えの1つが「スーパー早出」だったのだ。
「スーパー早出」の練習は基本の繰り返しである。
指名された3人に共通していることは、類稀な才能を持ち、高い潜在能力を秘めていることにある。加えて、猛練習に耐えうる体の強さを持っている。それこそ広島の伝統を受け継ぐ者に求められる能力である。過去を遡っても、高橋慶彦や金本知憲、新井貴浩、栗原健太といった選手たちは猛練習に耐え、力をつけた。現在の主力となった丸佳浩、鈴木誠也もそうだった。
「スーパー早出」の練習は基本の繰り返しである。メディスンボールを使って肩、腰のラインを軸と垂直に回すなど、いろいろな動きをさせて意識づけさせた。普通にバットを振るのではなく、先にタオルを取り付けたバットや長い竹を振らせる。その場で振るだけでなく、チューブのようなもので引っ張りながら振らせることもあった。
1時間弱の練習を終えると、本当の“早出練習”が待っている。初日から下半身はすでにパンパン。2日目には両手はマメでボロボロになっていた。