野間がストレッチで躊躇すると、石井コーチの雷が。

　キャンプ期間短縮をカバーするため、時間を早めるだけではなく意識改革も同時に行なっている。それはすでにウオーミングアップから始まっている。

　例えばキャンプ初日のことだ。ランニングからストレッチに移行する際、石井コーチはストレッチのメニューを野間に一任した。が、野間は躊躇し、何をやればいいのか分からない様子だった。

　それを見て、石井コーチは鋭く指摘する。

「いかに普段のウォーミングアップのとき、何も考えずにやっているか」

　自己鍛錬の第一歩はまず自分を知ることにある。

「体の張りにもいくつかのケースがある。すぐにトレーナーにマッサージしてもらえば張りは治まるかもしれないけど、（知識の蓄積が）何も残らない。たとえば自分でストレッチして治まる張りもある。どういう張りが自分で抑えられて、どういう張りがいつもとは違うのか、自分で分かるだけでも違う」（石井コーチ）

「プラスにしかならないことばかり」（安部）

　長いシーズンの中で万全な状態でプレーできる期間はごくわずかだ。自分の体を知っていれば、そのときに対応すべきことが分かる。何げないランニングもまたトレーニングの一環。開始時間を前倒ししただけでなく、内容の充実、効率化も怠らない。

　時間が長く、内容も濃密。そんな過酷なはずの日々にも、なぜか選手の表情は明るい。

　それは1日800から1000スイングを課した昨秋キャンプが今季の打力向上につながり、そして優勝という最高の結果を勝ち取ったからこそだ。広島ナインの成功体験となったことが、気持ちを駆り立てている。

　今季115試合に出場した安部は、練習中には“カラ元気”とも取れる声を張り上げるなど「スーパー早出」組の盛り上げ役も担う。

「選手としてうれしいこと。僕にとってはプラスにしかならないことばかりやってもらっている」

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