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青木宣親、アストロズ移籍の謎。
契約内容にいくつかの疑問が……。
posted2016/11/09 11:10
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
AFLO
ワールドシリーズが終わったばかりだというのに、青木宣親外野手がアストロズに移籍したというニュースが飛び込んできて、かなり驚かされた。
「マリナーズが青木をウェーバーにかけたので、アストロズがクレームして獲得した」
事実としてはそれだけなのだが、いくつかの疑問符がつく。まず「青木はフリーエージェント(以下FA)でマリナーズに入団したのだから、契約満了後もFAになるはず。そんな選手をどうして、わざわざアストロズは獲得したのだろうか?」という謎だ。
結論から先に言うと、アストロズがウェーバーで青木を獲得した理由は、すでに米メディアで報道されている通り、青木がまだFA権を持っていないからだ。
ご存知のように、米国などのアマチュア選手がFA権を取得するには、Major League Service Time、つまり大リーグ歴が6年必要だ(1年172日で換算される)。青木の大リーグ歴はまだ5年未満。それを基準に考えれば青木は、来季2017年のシーズン終了までFAになれない。
「青木はロイヤルズ退団時にも、ジャイアンツ退団時にもFAになっているのだから、当然、今回もFAになるはずだ」と私を含む日米のメディアの(おそらく)全員、そう信じ込んでいた。
過去2回の契約にあった条項が、今回はなかった。
確かに青木は、2012年にブルワーズと交わした大リーグ最初の契約満了時(2014年にトレード先のロイヤルズに引き継がれた)と、ジャイアンツと交わした2度目の大リーグ契約の満了時にFAになった。最初の契約満了時で大リーグ歴3年、2度目の契約時に同4年だったので、普通ならばFAになれなかった。
それなのに青木が2度もFAとなってジャイアンツやマリナーズと契約できた理由は、「XX(B) FA」と呼ばれる条項を契約に盛り込んでいたからだった。
「XX(B) FA」は本来、一定の期間内に大リーグ昇格のチャンスを与えられなかったマイナー選手たちが所属球団に飼い殺しにされないように、FAになる方法の1つである。それがある時期から外国人選手にも適用されるようになり、過去に大リーグに移籍した日本人選手の代理人が、幾つかの例外を除いて契約満了時にFAになれるように「XX(B) FA」を契約条項を盛り込んできた。