セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
セリエA初得点の地での屈辱と酷評。
本田圭佑は最後通牒を告げられたのか。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/10/28 11:30
この日は白のセカンドユニフォームで戦ったミラン。“ロッソネロ”に身を包んでピッチに立つ本田の姿は、今後見られるのだろうか。
モンテッラが求めたのは、結果を出すことだけ。
もし、ジェノア戦にも勝てば、ミランは'12年3月末以来の単独首位に返り咲くはずだった。翌日の試合でユーベが勝てば即返上という条件付きではあったが、たとえ一夜限りであったとしても4年半ぶりの首位奪取が成就していれば、数年来嘆き節の絶えないミラニスタたちがどれほど勇気づけられただろう。
首位獲りのかかった大事なゲームに、3トップの右FWを任された本田に求められていたのは、どんな形であれ結果を出すことだけだった。
そのための経験値と能力を持っていないとは言わせない。指揮官モンテッラの要求はシンプルで明快だった。
ジェノア戦での先発起用は、不遇をかこっていた本田にとって“ここしかない”というタイミングで訪れた、千載一遇のチャンスであったはずなのだ。
元主将アンブロジーニ「1失点目の原因は本田だ」。
しかし、2年半前にセリエA初ゴールを決めたジェノアの本拠地ルイジ・フェラーリスは、この夜の本田に冷淡だった。
11分、右サイドから切り込んだジェノアMFリンコンがゴール前へ低い弓なりのクロスを放ったとき、PA内には守るミラン側の選手が本田を含めて5人いた。
本田以外は、キャプテンマークを巻いたDFデシーリオを筆頭に、4人とも4バックを組むイタリア人DFたちだった。ゾーンディフェンスで守る彼らは、リンコンがキックした瞬間を見計らい、余裕をもってオフサイド・トラップを仕掛けた。
ファーサイドにいた本田だけが動かなかった。
トラップは失敗した。
本田の背後からはFWラクサールが抜け出し、目の前にはニンコビッチという無名のセルビア人FWが跳び込んでいた。
低いヘディングゴールが決まり、ジェノア先制にフェラーリスは大歓声で揺れた。
試合を中継するSKYイタリアで解説を担当していたミランの元主将アンブロジーニは「失点の原因は、はっきりと本田にある」と呻いた。
「前線の選手にDFの狡猾さを求めるのは酷なことだ。しかし、あの(守備機会での)ポジションでは、“踏み出さなかった1歩”が命取りになる。本田の不注意だったとしかいえない」