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ピケが代表を去り、クエジャールが激怒。
スペインメディアに選手からの反撃。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byAFLO
posted2016/10/16 07:00
10月9日のW杯予選アルバニア対スペイン戦。ピケは白のインナーの上に、袖をカットしたユニフォームを着用した。
代表戦のピッチで常に指笛にさらされてきたピケ。
2人目の被害者はスペイン代表の一員としてのピケだ。
いたずら好きな性格や奔放なコメントのせいでしばしば物議を醸してきた彼だが、昨年6月の親善試合コスタリカ戦以降は、ピッチでボールに触れるたび味方であるはずのスペインサポーターから指笛を吹かれてきた。
背景にあるのは、ピケが生まれ、暮らし、愛するカタルーニャ自治州とスペインの政治的対立。ひいては、それを象徴するバルサとマドリーのライバル関係である。しかしながら彼に「反スペイン主義者」のレッテルを貼り、サポーターに色眼鏡をかけさせたのは、マドリーを発信地とする一部のメディアだ。
長袖ユニフォームの袖を切ってピッチに立つと……。
さて、9日のW杯予選アルバニア戦でもピケは味方から責められた。舞台は敵地だったので、スタンドからの指笛ではなくSNSによって。
この日スペインチームは、白のセカンドユニフォームだった。ピケはいつもどおり長袖を選んだが、袖丈が合わず動きづらかったため、両袖を切り落としてピッチに立った。
すると試合開始間もなく「ピケは袖先に付いている赤と黄色のライン(スペイン国旗の象徴)を切り取った」とツイッターで騒がれ始めた。なるほど半袖の選手を見ると袖先が2色で飾られている。
そこにスペインで最も多くの読者を持つスポーツ紙マルカやAS、テレビの人気サッカー番組といったメディアが参入すると、炎上は本格的となった。大手メディアグループのコンテンツ・ディレクターも、個人アカウントからではあるものの、「袖の国旗色を取ってしまえばスペイン代表でプレイしていることがカタルーニャの人たちにばれないからな」と発信し、油を注いだ。
試合終了後、スペインサッカー協会の関係者から事態を知らされたピケは唖然としたらしい。長袖の先に赤黄の縁取りなどなかったからだ。そして、その程度のことは騒ぎ立てる前に確認できるはずのメディアが一枚噛んでいたことを聞くに及び、「もううんざりだ」とつぶやいたという。