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ピケが代表を去り、クエジャールが激怒。
スペインメディアに選手からの反撃。
posted2016/10/16 07:00
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
AFLO
文脈から切り取った一言や主観をたっぷり混ぜた未確認情報を、自分たちの利益のために喧伝するメディアはどの国にもある。スペインでは「ゴミジャーナリズム」と呼ばれている。
10月上旬、2人の選手がこの被害にあった。
1人目はスポルティング・ヒホンのベテランGKクエジャールだ。
リーガ第7節デポルティーボ戦を数時間後に控えた1日夕方のこと。ヒホンの地元アストゥリアス州で最も読まれている新聞ラ・ヌエバ・エスパーニャのウェブサイトに、チームのバスから降りてくるクエジャールを捉えた動画が上げられた。
タイトルは「リアソールスタジアムに着くなり(デポルティーボ)ファンに挑むイバン・クエジャール」。
確かに監督アベラルドと共にバスから現れたクエジャールは、その正面に陣取り罵声を浴びせている(と思われる)デポルティーボファンを睨みつけているように見える。
しかし、実際は違った。
ヒホンのバスが停車したちょうどそのとき、デポルティーボファンの1人がてんかんの発作を起こしていた。
これに気付いたヒホンのチーム付き看護師はバスから飛び出し、倒れたファンの元へ走った。
続いて降りてきたクエジャールは目を凝らして、手当の様子を心配しながら見ていたのだ。
ジャーナリストを数分間罵倒したクエジャール。
事実を明らかにすべく記者会見を開いた彼は、ラ・ヌエバ・エスパーニャに動画を送ったジャーナリストに対し、集まった人々の面前で数分間にわたって怒りをぶちまけた。
「自分は正しい情報を提供したと思ってるのか? 送るだけ送って、あとはご自由に、で問題なしだと? デポルのファンかヒホンのファンかは関係なく、人の健康状態を弄んで、その場にいながら本当は何があったかを伝えず、それでもジャーナリストか!」
収まらないクエジャールは興奮し、声を荒げた。
「言わせてもらう。お前はバカだ。愚かな情報の提供、それがお前がやってることだ。チームにとって大事な試合の前に、俺は発作を起こした人を気に懸けた。なのに『ファンに挑む』だと? そんなのクソ野郎の仕事だ」
クエジャールの一線を越えた言葉づかいや態度を、所属先のヒホンは公式に非難した。が、一方で誤った情報に抗議する姿勢は強く支持した。