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来季はいない外国人を二軍で起用!?
田口壮が明かした、その深遠な理由。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKiichi Matsumoto
posted2016/10/14 08:00
ボグセビック外野手は日本初挑戦だった。現在32歳、田口二軍監督の心意気は彼に伝わっただろうか。
来年チームにいない選手を起用し続けた理由は?
田口二軍監督にとって、外国人選手の起用法は頭の痛い問題だったのではないか。しかし田口監督はそれを否定した。
「外国人に関しては、いかに話し合いを持つかということが重要ですが、そこは慣れてると言えば慣れている。どうすれば彼らが一番納得するかというのを、僕は知っているので。周りからは外国人びいきに見えるかもしれませんが、そうしないと彼らが動かない、納得しないとわかっていますから」
現役時代8年間メジャーに在籍し、ワールドチャンピオンに輝いただけでなく、マイナーリーグでの苦難も味わった田口監督ならではの、外国人選手に対する考え方がある。
9月に入ると、ディクソン、モレル以外の外国人選手に対しては来季の契約を結ばないという報道が出た。
それでも田口監督は、ウエスタンリーグ最終戦の9月25日まで、おそらく来年はチームにいないであろう外国人選手を起用し続けた。
「1人としていらないメンバーはいないと僕は思っていますから。全員が大事な選手で、僕は全員の人生を預かっている。彼らの野球人生というのは、今年だけではなく、来年も再来年も続いていくし、人生はもっともっと先まで続いていく。それは外国人も日本人も、僕にとっては一緒なんですよ。それだけはちゃんと考えて、最終戦までラインナップは組まなあかん、と思っていました」
「あの球団はいい球団だよ」と思ってもらうために。
それは若手のチャンスを減らすことになるのでは、という疑問もあるが、田口監督はこう続けた。
「若手の育成はもうずっと継続的にやってきているので、それぞれ課題はちゃんと見つかっている。ここで若手に5打席与えたら変わりますかといったら、急には変わらないですよね。でも中堅、ベテラン選手や外国人選手に5打席与えて、例えばスカウトの方が見ていて、『あいつ、まだいけるやん』となったら、その選手の人生が変わるわけです。選手たちが次の年に、たとえチームが違ったとしてもハッピーにちゃんと野球ができるということも、僕は大事な部分だと思っています。
その積み重ねが、『あの球団はいい球団だよ』と思ってもらえることにつながる。そうしたら選手がどんどん来てくれる。別に見返りを求めてやっているわけじゃないけども、外国人選手にも、日本に悪いイメージを持ってほしくない。彼らが、『日本に行ったけどずっとファームにおったわ。でも意外とええとこやで、あのチームは』と言ってくれたら、次に外国人選手を獲りにいく時に、『オリックスだったら行きます』となるかもしれない。
チームを強くしていこうと思ったら、そこの部分は絶対に必要だと思うんですよ。それは、ここ(二軍)でできるチームを強くする方法だと僕は思っています。だから最後までまんべんなく起用しました。『何も考えてない』とか『アホちゃうか』って言われますけど、実はめちゃくちゃ考えてます(笑)」
田口監督は、苦悩を表に出さず、あっけらかんと笑う。