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“ダメレスラー”が大仁田より大暴れ!
「ガンバレ☆プロレス」が醸す人間味。 

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byDDT Pro-westling

posted2016/10/09 08:00

“ダメレスラー”が大仁田より大暴れ!「ガンバレ☆プロレス」が醸す人間味。<Number Web> photograph by DDT Pro-westling

お金はない。有名プロレスラーもいない。それでも「ガンバレ☆プロレス」は人々を興奮させる根源的なパッションを持っている。

ノーロープ有刺鉄線デスマッチで見せた大家の意地。

 そして、そしてメインだ。大家健・今成夢人・翔太・三富政行vs.大仁田厚・浪口修・GENTARO・保坂秀樹。大会前に危惧されたのは、大仁田がガンプロを飲み込んでしまうんじゃないかということだ。大仁田は何もないところから馬場・猪木クラスの知名度を獲得した人間である。新日本プロレスに単騎で存在感の勝負を挑んで負けなかったプロレスラーである。まして試合形式は『ノーロープ有刺鉄線ストリートファイト・トルネード8人タッグデスマッチ』。完全に大仁田の土俵だ。終わってみたら大仁田の一人勝ち。そうなっていてもおかしくはなかった。

 が、予想は予想でしかなかった。逆に観客の大家コールが大仁田を飲み込んだ。大家と同じくらい、ガンプロユニバースが「大仁田に負けてなるものか」と意気込んでいた。しかも超満員だ。いつもの10倍だ。怖いものなんかあるはずがない。大仁田が暴れる以上に大家が暴れ、本職・映像スタッフの今成が大仁田に有刺鉄線バットを振り下ろす。最後は血まみれの大家が、必殺技・炎のスピアーで浪口からスリーカウントを奪った。

B'zの『BAD COMMUNICATION』とともに大団円。

 ガンプロの場合、ここからがもう一つの“本番”だ。ファンがリングを囲み、大家のテーマ曲、B'zの『BAD COMMUNICATION』に合わせてマットを叩く。リング上の選手たちは足を踏みならして踊る。大仁田まで踊っていたから驚いた。元祖インディーは、自分のフォロワーが作った世界に気持ちよく飲み込まれていた。今まで見たことがないくらいの大団円。感じたことがないくらいの高揚感。なんだこれは。

 たぶん、観客は観客というだけじゃなかった。単にチケット買って見に来ただけじゃなかったのだ。同じように関係者もただの関係者じゃなく、マスコミもただのマスコミじゃなかった。ガンプロ後楽園大会は、誰にとっても他人事じゃなかった。ダサくて、カッコ悪くて、なんだかいつも泣いてばかりいる大家健とその仲間たちが自分のように思えたってことだろう。だから後楽園が超満員になったことがたまらなく嬉しい。くすぶり続けた男たちの狂い咲きが誇らしい。そう思っちゃったんだから仕方ないじゃないか。

「今日、この会場に来たみんながガンバレ☆プロレス」だと大家は言った。

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