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西武・浅村栄斗が見たくなかった物。
「足を引っ張ったという自覚はある」 

text by

市川忍

市川忍Shinobu Ichikawa

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2016/09/22 07:00

西武・浅村栄斗が見たくなかった物。「足を引っ張ったという自覚はある」<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

浅村栄斗の打率が3割を超えたのは、実は2013年の1度だけ。今年3割を維持できれば、さらなる飛躍のきっかけになる。

気分を変え、フォームを変えて調子を取り戻す。

 初球から思い切りフルスイングする姿や、その豪快な打球からはイメージしにくいが、悩みや感情を胸にしまい込む性格である。

「大丈夫、大丈夫」

「そのうち打てるようになるよ」

 浅村の性格をよく知るベテランの上本達之や、大阪桐蔭高の先輩中村は、浅村が悩み過ぎないようにと、凡退して肩を落とす浅村にあえて笑顔で声をかけ続けた。

 浅村自身も「頭を空っぽにするために」と、試合前の練習にアメリカンノックを取り入れた。外野のポール間を全力でガムシャラに走り、ただひたすらに打球を追った。

「対ピッチャーというより、フォームとかタイミングとか、そういう自分側のことを考え過ぎていましたね。アメリカンノックを受けたり、走ったりして頭をリセットしていました。下半身のキレを出すためという意味もありますけど、それをやり続けたのも夏場になってバッティングがよくなった理由のひとつかもしれません」

 そしてもうひとつ、8月に高打率を残せた要因がフォームの見直しだった。それまでよりスタンスを狭くして打席に立つようになった。

「打ちに行くときに、足幅が広くなるクセがあったんですよね。そのせいで、真っ直ぐに差し込まれたり、回転できずに中途半端に振ってしまう打席が多かった。コーチのアドバイスもあって、もっと体の回転を意識しようと。足の幅を狭くすることで、踏み出したときのスタンスも以前より狭くなったし、体が回転しやすくなった。ピッチャーのボールに逆らわずに、右方向に打ち返せている、いい感触がありました」

「天才的」な能力を思えば今でもまだ物足りない。

 浅村は今年でプロ入り8年目。大阪桐蔭高から入団し、3年目の2011年にレギュラーに抜擢されて137試合に出場。その後はチームの顔として常に主軸を担ってきた。

「ずっと出してもらっているので、そのへんの責任というのは感じています」

 現在打率は3割を超え、打点はメヒアに次ぐチーム2位。それでも、誰もが「天才的」と表現する浅村のずば抜けた能力を思えば、まだまだ物足りない活躍だ。

【次ページ】 内野手のリーダーは、浅村しかいない。

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