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西武・浅村栄斗が見たくなかった物。
「足を引っ張ったという自覚はある」
posted2016/09/22 07:00
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
NIKKAN SPORTS
「あれ、目に入るの嫌やった。打率も低いし、得点圏打率も悪いし……」
浅村栄斗が苦笑する「あれ」とは、打席に入る際に球場の大型ビジョンに出る自身の成績である。
今年から西武プリンスドームは、打率や本塁打数のみならず、得点圏打率や出塁率、盗塁数など打者成績を詳しく電光掲示板に表示するようになった。選手の「働き」が一目でわかる、観客にしてみれば非常にうれしいサービスだ。
しかし今シーズン序盤の浅村にとっては、毎打席厳しい現実を突きつけられる時間だった。打席に入るたび、1割台後半の打率がいやおうなしに目に入った。
8月、全試合に出場しリーグトップとなる5割の得点圏打率、そしてリーグ2位となる3割8分4厘の打率を残した浅村は、自身3度目となる月間MVPを受賞した。9月19日現在、打率は3割6厘。得点圏打率も3割目前まで持ち直している。
「コツコツとヒットを重ねることができて、この数字までやっと来たという感じですね」
「だいぶ足を引っ張ったという自覚はあります」
シーズン序盤の浅村は、打撃不振に苦しんでいた。打率は1割台で、なかなか2割にすら到達しない。得点圏にランナーを置いた場面でヒットが出ず、足元を見つめながらベンチに引き揚げるシーンが目立った。浅村だけの責任ではないが、チームの勝ち星も足踏み状態。首位のソフトバンクに大きく水をあけられてペナントレースを折り返した。
「いい打順を任せてもらっている分、やっぱり自分のバッティングが大きく勝敗を左右する。だいぶ足を引っ張ったという自覚はあります」
3番、5番、そして中村剛也がニ軍落ちしたときには4番を任されることもあった。主軸を打つバッターとしての責任感がズシリと肩にのしかかった。