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権田修一がSVホルンで放つ存在感。
「結局、僕はこういう性格なんです」
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byAFLO
posted2016/09/09 16:30
W杯最終予選に向けた日本代表の予備登録に、権田修一はしっかりと名前を連ねている。虎視眈々、という言葉がよく似合う。
日本人監督に戸惑うオーストリア人との橋渡しに。
4月に入ると、クラブは監督交代に舵を切った。新たにやってきたのは、日本人の濱吉正則氏。本田の命を受けた指揮官だったが、クラブ初の日本人監督に現地出身の選手たちに戸惑いも広がった。
権田は、冷静にチーム状況を観ていた。そして彼は動いた。
「監督交代は僕もFC東京で経験があるけど、やっぱり大変なことです。ましてやオーストリアのクラブに日本人指導者がやってきた。現地の選手たちも、練習に対する考え方が違ったりするので戸惑ったと思う。僕は、日本で普通なことがこちらでは普通ではない、という気持ちでここに来た。だから濱吉監督の指導も、僕ら日本人にとっては普通なことでも、オーストリア人にとっては普通ではなかったのだと思う。
例えば、2部昇格が決まった試合の翌日も、リカバリーの練習をした。僕らの感覚からすれば、ここからも試合は続くので当然コンディション調整は必要です。ただこっちの選手は、そのシーズンの目標を達成すればそれで終わり。来季はまた新たに考えようというスタンス。目標達成したのに、何でまだ動かないといけないのかが理解できないみたいだった。
そういう時に、選手目線で同じ立場同士で何かを伝えたり、理解させたりすることが必要だと思った。だからアプローチの仕方や伝え方を工夫しました。内容が内容だけに難しかったけど、ドイツ語と英語を交えて話しました。たぶん、オーストリア人にとっては理不尽なこともある。ただ、それを理解できた選手が今季はチームに残った印象です。でもそれで良いと思う。チームの哲学の元でプレーするのが集団競技でもあるので」
「結局僕はこういう性格なんですよ」
チームのために動いた結果、自分に跳ね返ってきたある発見もあったという。権田は続ける。
「プレーが出来ない中、何で貢献するかといえばこういうところしかない。あとあらためて思ったのは、結局僕はこういう性格なんですよ。去年、東京でも『何でこんな事まで味方に言わないといけないんだろう』とか思っていたこともあった。もちろん言い過ぎてはいけないし、やり過ぎてはいけないと自分を省みることもある。ただ、クラブのことを考えたり、チームのバランスを見るというのも、僕の性格。
理想を言えば、みんなが不満なく、チームがひとつになってやるにはどうしたらいいのか。そんなことを考える。東京でいた10年間は、それが良いか悪いかわからなくなっていた。でも綺麗事ではなくて、僕は自分がどうこうよりもみんなが充実しているほうが楽しいし、うれしい」