猛牛のささやきBACK NUMBER
東海大相模の両エースがプロで競う!
オリックス吉田凌のライバル物語。
posted2016/09/02 07:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Hideki Sugiyama
好投手が揃った今夏の甲子園は、作新学院(栃木)の54年ぶりの優勝で幕を閉じた。
1年前、その栄冠に輝いたのは、左右のエースを擁して勝ち上がった東海大相模(神奈川)だった。
大会中に最速152キロをマークした左のエース・小笠原慎之介は、その後、ドラフト1位で中日に入団。ルーキーイヤーから一軍で先発登板を果たしている。
交流戦開幕投手に抜擢されるなどのニュースが時折報じられる小笠原に対し、もう1人のエース、吉田凌はどうしているのだろう? と気になっている人もいるだろう。
一足飛びではないが、吉田も一歩一歩、プロの世界で歩を進めている。
「1年って、早いすね」
吉田はそうつぶやく。
昨年の甲子園で3試合に先発した右のエース・吉田は、その後、ドラフト5位でオリックスに入団した。
今年の甲子園はさすがにゆっくり観戦する暇はなかったが、横浜(神奈川)対履正社(大阪)戦は、昨夏準優勝した仙台育英のエースで、同じくオリックス入りした佐藤世那とともにテレビにかじりついた。
「『最近の高校生はすごいなー!』って話してたんですよ。だって平気で150キロバンバン投げるわ、打つわ。おかしいですよ、最近の高校生は」
いやいや、あなただって5カ月前まで高校生だったでしょうが。そう突っ込みたくなるが、もう別世界にいる感覚なのだろう。
高校半ばまでの評価は小笠原より上だった。
しかし吉田のプロ生活は、高校1、2年生の頃の自分を取り戻すことから始まった。その頃が自分史上一番状態がよかったと感じていたからだ。
「小笠原以上によかったんですよ」と屈託なく笑う。
県内でしのぎを削った横浜の渡辺元智前監督にもこう言われたことがあるという。
「1、2年の頃は吉田君のほうがよかった。あの頃なら普通にドラフト1位だったのにな。でも3年になって伸び悩んでるな」
高校1年生の頃は体重が今よりも10kg以上軽い63kgと細かったが、球速は149キロを記録した。2年夏には151キロに伸び、県予選決勝・向上戦ではストレートとキレのあるスライダーを武器に20三振を奪い、甲子園出場に導いた。