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イチローに届けられた51枚ものピザ。
盟友ボットのジョークは敬意の表れ。
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2016/08/31 11:30
8月18日の試合、プレー中のふたり。ちなみにイチローが好きなピザ屋が球場から100キロほど離れていたので、ボットはチームスタッフに1時間半かけてクルマで運んでもらったそう。
ステーキの代わりに牛1頭を贈った大物選手。
日々、真剣勝負の世界に身をおきながら、ちょっとしたことで楽しみ合うイチローとボットを見て、思い出したことがある。イチローも大好きなケン・グリフィーJr.とルー・ピネラ監督の逸話だ。
ふたりがマリナーズに在籍していた1995年春キャンプのこと。打撃練習の際に「ステーキディナー」をご馳走する賭けを行い、ピネラ監督が勝った。するとグリフィーは監督が不在の間にキャンプ地の監督室に牛1頭を運び込み放置した。異臭が充満する監督室。戻ったピネラは地団駄を踏み、帽子を投げ、顔を真っ赤にして悔しがったと言う。
“お遊び”のスケールの違いはあれ、お互いを認め合い、リスペクトしあえる関係だからこそ成り立つアメリカン・ジョークと言えるだろう。メジャーの野球を取材しているとこういう愉快な場面に巡り合えるのも魅力のひとつと言える。
「イチローへの敬意はより高まっている」
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さて、話は戻り、ボットがしみじみと話した言葉が心に残った。
「僕はルーキーの頃からイチローを尊敬してきた。今はふたりともベテランになったが、彼に対する敬意はより高まっている。多くの選手はトラウトやハーパーが持つような生まれ持っての能力に憧れるが、イチローは能力だけでなく自己鍛錬が素晴らしい。僕はそういうところが好きなんだ。彼から学び、ジョークも言い合える。僕らだけにわかりあえることはたくさんあるんだ。僕は幸せだよ」
メジャーを代表するふたりの“お遊び”の結末にあった“ちょっといい話”に心が和んだ。