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イチローに届けられた51枚ものピザ。
盟友ボットのジョークは敬意の表れ。
posted2016/08/31 11:30
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Getty Images
ちょっと前の話になるが、マイアミ・マーリンズのイチローとシンシナティ・レッズの主砲ジョーイ・ボットがお互いに「ジャンクフード」を差し入れし合い、周囲を笑いの渦に巻き込んだ。メジャーの野球シーンで、ときたまお目にかかるユーモアとセンス。アメリカ野球のおおらかさとも感じる。
8月18日、シンシナティでのことだった。どこで聞いたのか、イチローのロッカーに彼が数年前まで好んで食べていた「カリフォルニア・ピザ・キッチン」のプレーン・チーズ・ピザが大量に運びこまれた。その数は51枚。選手、関係者が山積みされたピザを見て「クスクス」と笑っていると、ちょうどそのときイチローがクラブハウスに入ってきた。ピザの山を視界に捉えた瞬間、イチローは大笑い。そして言った。
「ボットでしょう!」
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即座に送り主の名を言い当てたことにはイチローなりの理由もあったが、嬉しそうな笑顔を見せながらもテキパキとクラビー(クラブハウススタッフ)に指示を出し、ピザは球場セキュリティスタッフに配られた。
51枚のピザはダンキンドーナツの意趣返し!?
その日の試合後。ボットが真相を少しだけ教えてくれた。
「実はイチローから2日前にとてもfunny(笑える)なものをもらったんだ。だから、僕も彼が笑ってしまうようなものを何か送りたいと思ったんだ。彼が面白がってくれたのなら、それでいいんだ。彼が僕に何をくれたのかって? それは言えないな。彼に聞いてくれよ(笑)」
レッズ一筋10年。32歳のボットは2010年にリーグMVPに輝き、オールスターにも4度出場する「ミスター・レッズ」とも言える一塁手だ。知性派としても知られ、真摯に野球に取り組む姿勢はイチローも一目を置く存在である。
そのふたりは対戦のたびにいつも話し込む間柄だ。今回の件もふたりのたわいのない会話が“お遊び”の発端となった。イチローが説明してくれた。
「僕が2年前(ヤンキース時代)にボストンのダブルヘッダーの合間にドーナッツを10個食べた話をボットにしたら、彼がとてつもなく驚いたんですよ(笑)」
ボットには、ストイックに野球に取り組むイチローが、試合の合間にジャンクフードを口にするとは想像できなかったのであろうか。ともあれ、その反応を面白がったイチローに遊び心が生まれた。
ボストンで食べた「ダンキンドーナツ」をボットへ大量にプレゼント。ボットが爆笑する姿を想像し、面白がったのだった。