猛牛のささやきBACK NUMBER
「初回はノーアウト満塁でもいい」
オリ・若月健矢に同居する強気と繊細。
posted2016/08/17 11:30
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
NIKKAN SPORTS
「負けた日はなかなか寝られません」
オリックスの20歳の捕手・若月健矢は言う。
「あそこでなんであの球選んだんだオレ、とか、いろいろ考えてしまって。夢に出てくることもあります」
今季、先発マスクを被った試合は18勝24敗(8月15日時点)。24日間は眠れぬ夜を過ごしたことになる。
6月3日に今季2度目の一軍登録を果たすと、徐々に先発の機会を増やし、7月以降は伊藤光がマスクを被る金子千尋の登板日以外は、プロ3年目の若月が先発マスクを任されている。
「僕はまだ、使ってもらっている立場」
若月自身はそう捉えている。しかし、下位チームだからこその若手育成のための起用という見方を、鈴木郁洋バッテリーコーチは否定する。
「今のチーム状況だから、経験をさせるために使っているというわけじゃない。レギュラーとして考えている。もちろん経験を積ませようとか、将来を見据えて使ってみようかという若手もいるけど、若月はちょっと別格です」
コーチ「もともとバッターを抑える感覚を持っている」
鈴木コーチが高く評価するのはリード面だ。
「若月というキャッチャーは、バッターの反応もよく見れるし、もともとバッターを抑える感覚を持っている。こうやって次はこうしたらバッターはこうなるな、というのをイメージできるんです。そういう感覚って絶対に必要だけど、持っていない子の方が多くて、それを教えてできる子もいれば、何回教えてもできない子もいる。あいつはそういうものを、プロに入ってきた時から持っていると感じていた。こちらが『もういっちょこれで行ってほしいな』とか『これ行っても大丈夫やで』と思った時に、そういうリードをするので、信用しています」
捕手にとって最大級の褒め言葉だろう。