リオ五輪PRESSBACK NUMBER
盟友・萩野の金メダルを称える潔さ。
銅獲得、瀬戸大也もやはり大器だ。
posted2016/08/07 16:20
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
JMPA
凍り付いたように動けなくなっていたフィニッシュから、まだ20分しかたっていなかった。けれども、瀬戸大也は悔しさを胸の奥に閉じ込め、さばさばとした口調で報道陣に対応した。これが、瀬戸の強さだ。
「決勝前、疲れているなと感じた。本当は、しっかり予選からいって、決勝もタイムを上げていきたかったのだけど、予選の疲労感が残っていた。でもこの疲れもオリンピックならではだと思ったし、予選から行けたというのも自分としては良かった」
日本人2人が金メダルを懸けて争った男子400m個人メドレー。表彰式では、金メダルに輝いた萩野公介の横で銅メダルを首から提げて、笑顔で萩野を称えた。思い描いていた光景とは違っていたはずだが、それでも素直にライバルを称賛する姿はさわやかだった。
「まだまだ金メダルを獲れる器じゃないと感じた」
予選では4分8秒47の自己ベストを出して全体の2位で決勝に進んだ。反対に、萩野はベストより2秒以上遅い4分10秒台で3位。予選である程度力を使った瀬戸に対し、楽に泳いだ萩野。その差が決勝のレースに影響を与えた。
決勝レースでは、萩野は4分6秒05の日本新で泳ぎ、瀬戸は予選で出した自己ベストにわずかに及ばない4分9秒71というタイムだった。
「公介は自己ベストを出して金メダルを獲っているけれど、自分は自己ベストを出せなかった。まだまだ金メダルを獲れる器じゃないと感じた」
そんなふうにも言ったが、潔く負けを認める姿は、むしろ器の大きさを感じさせた。
「自信」をキーワードとして戦ってきた。
昨年の世界選手権第5日。200m個人メドレーで準決勝敗退と惨敗した後、男子200m背泳ぎでミッチェル・ラーキン(オーストラリア)のレースを見て、ゾクッとした。
レース中、会場の大スクリーンに自分をアップで映した画面が出ていることに気づいたラーキンは、ニヤリと不敵な表情を浮かべた。
「ヤバッ、こいつ超余裕じゃん。やっぱり自信があるんだなと思いました」