リオ五輪PRESSBACK NUMBER
渡部香生子、涙のロンドンから4年。
伊藤華英が「繊細」と感じる理由。
posted2016/08/08 07:00
text by
伊藤華英Hanae Ito
photograph by
AFLO
渡部香生子、19歳。
もう大人になったと勘違いしていたが、まだ19歳だ。
この年で、日本を背負っている。大したものだと思う。普通の女の子たちは、高校を卒業して大学生になったり、社会に揉まれ始める年頃だろう。気持ちの整理や、身体の調子を含め複雑な年頃だと思う。
代表で一緒になった時、「きっと不器用でこれから、色んな感情と向き合って行くのだな」と同じ女性として、ポジティブなだけではない感情を抱いたのも昨日のことのように思う。
私の印象としては、彼女は非常に繊細だと感じる。泣き虫で負けず嫌い、きっと水泳を引退してしばらくしてからではないと、彼女の本心を知ることが出来ないのではと思いを馳せる。
ロンドンオリンピックが、彼女の初オリンピックだった。15歳というだけで注目され、水泳が好きだった少女は、プレッシャーやいつもと異なる雰囲気に圧倒されただろう。今までは年の近い選手が何人かいた遠征だったが、オリンピックに選出された選手は、当時15歳だった彼女にとって、ほとんどが先輩だ。
2012年のオリンピック選考会200m平泳ぎで2位に入ってロンドンへの切符を手に入れたが、本番ではベストタイムから程遠い結果で、準決勝敗退となってしまった。
香生子の、あの時の涙が忘れられない。
北島康介さんに肩を組まれて泣いていた。
現役選手、しかもトップでいることのタイトさ。
私自身の話をすると、何が起ころうとロンドンは最後のオリンピックだと心に決めていた。この気持ちがあったから、つい若い選手を気にかけていた。次のリオでは、若い選手たちが日本の競泳界を確実に引っ張る、と感じていたのだと思う。
オリンピックが終われば、次のオリンピックへの戦いがすぐ始まる。一息つく間もなく、次から次へと試合があり、練習がある。現役選手でいることを選択し、しかもトップでい続けるというのは、当たり前だけど非常にタイトで、最後はレースで勝つことが答えなのだから厳しい世界だ。